ネットのマンガ連載は才能を生むのか磨り潰すのか~「SPY x FAMILY」を読む~ – 8th FEB.

ネットのマンガ連載は才能を生むのか磨り潰すのか~「SPY x FAMILY」を読む~

マンガ愛好家諸氏は、最近の新刊が雑誌連載を経由していないことがしばしばであることを承知しているだろう。かつては週刊誌や月刊誌といった雑誌に連載を繰り返し、その後にコミックスが発売されるのが基本であった。しかし今はそれだけではなくなっている。

最近はアプリやブラウザによるネット連載を行うことが増えている。人気が出た場合にコミック化されるようなスタイルを取るケースは少なくない。新人のチャンスが広がった、と考えることもいえるし、ベテランの再チャレンジのチャンスが与えられていることでもある。

しかし連載の人気が今ひとつであればコミックにもたどりつけないし、そもそもコミック一冊にならずに終わってしまうこともある。コミック第一巻の売れ行きが芳しくない場合は続刊については打ち切りとなることも少なくないともいわれる。

最近では続刊を商業発売するチャンスに恵まれなかった作家が、Kindleの電子書籍で発刊を試みたり、自ら編集・印刷負担をして同人誌専門書店などに置いて販売するケースもあるほどだ。

さて、前振りが長くなってしまったが、「SPY x FAMILY」はそんな連載であるが、できれば続けて欲しい一作として紹介したい。

話はシンプル。舞台は東西対立のようなものがある国があって、暗躍するスパイがいて、暗殺者もいる、そんな世界。

腕利きのスパイとして活躍する主人公は、とある要人に近づく方法として、偽装した子どもと妻を用意する必要に迫られる。そこで得たのは、なぜか超能力者(心が読める)の娘と、なぜか暗殺者(であることを隠している)女性だった。

これはもう、アニメかマンガに向いているシチュエーションだし、ベタな展開が続いても楽しくなりそうな話だ。先日発売された1巻は偽装家族として3人が出会い、小学校のお受験に臨むまでが描かれた。連載をしているジャンプ+のアプリではなぜか2巻に相当する分が一気に無料開放されていて、続けて読めば自分の好みかどうかが分かる仕掛けになっている。

私は、といえば2巻分までアプリで読んだうえで、2巻が発売されたら買うことを決めた。むしろ話は始まったばかりなので、とりあえず10巻分くらいは連載を続けて欲しい、と思うくらいには気に入っている。

一方で、ネット連載のような形で人気がシビアに現れる場合、なかなか展開が進まないと飽きが来てしまい、途端に打ち切りを食らう可能性もありそうだなとも心配する。今のところアプリ上のランキング上位なので大丈夫とは思うけれど。

今どき、無料で読めてしまう時代なのに(厳密には広告バナーが出るので読者はコスト負担に参加しているといえるが)、紙のコミックを買う酔狂な人は減っているだろう。

作家にも本来なら紙のコミック売り上げだけではなく、アプリのページビューからインセンティブの追加支払いがあるようにしていただきたいものだ。私はまだまだしばらくは紙でコミックを買うつもりだけれど、電子配信でも中堅以下の作家がマネタイズされる時代が来て欲しいなあと思う。

……古き良きスパイ映画の設定で、古き良きペースで展開するマンガを、iPadのタブレット画面で読みながら、そんなことを考えてしまった。もう内容は読んでしまったが、紙で読む2巻の発売が楽しみである。

試し読み (ジャンプ+のアプリから閲覧可能) https://shonenjumpplus.com/episode/10834108156648240735
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