3人の軸が安定した物語を作り上げる~「劇場版SPY×FAMILY Code: White」 – 8th FEB.

3人の軸が安定した物語を作り上げる~「劇場版SPY×FAMILY Code: White」

最近、ジャンプ系の力強さが際立っている。「鬼滅の刃」「呪術廻戦」「SPY×FAMILY」と大ヒットが続いている。もちろんそれ以前から大ヒットの系譜はあるわけだが、単なるバトルものの範囲を超えてきたということで、「SPY×FAMILY」が私は好きだ。ジャンプ+(アプリ)発というのも新しい。昔そういうレビューもしたことがあるが、まさかここまで大ヒットするとは思わなかった。

 →8th FEB. ネットのマンガ連載は才能を生むのか磨り潰すのか~「SPY x FAMILY」を読む~

実はこのマンガ、のほほんギャグなパートが意識されがちだが(特にアーニャを中心とした世界で)、背景として戦争の爪痕、厳しい復興の道のりや政治の不安などもちらりと描かれるのがいい。主人公2人、ロイドとヨルさんはそれぞれキツい背景をもっていて、いつかは衝突する可能性がある。ぶっちゃけ、シリアス展開と悲劇的結末は誰も望んでいないし、そこに主眼が行くことはないと思うが、でもそういうバックグラウンドあってこそギャグパートが光る部分もある(ロイドを一流スパイに育てたシルヴィアさんが、甘い気持ちでテロを起こそうとした若僧を恫喝するシーンなんかぞくりとさせられたが、そこにアーニャのパートはまったく重ならない)。

さて映画のお話。マンガとは別のオリジナルストーリーとしつつも、ちゃんとSPY×FAMILYの1エピソードして成立するように工夫していてなかなかすごかった。またシリアスすぎる展開になるとアーニャの明るい世界線(とうんこネタ)が炸裂してこれをとにかく中和するのもよかった。

子どもが素直に楽しめ、でも少しだけ「戦争ダメだよな」ということはすり込まれていくといい。そしてロイドもヨルさんも業を背負っていることは間違いないが、3人が「FAMILY」として選べる道が示されることを祈りたい。

ま、基本はギャグマンガなんで、あまり心配はしていないんだけどね。