ミニマリストは奈良時代にどう生きるか~「あおによし、それもよし」を読む~ – 8th FEB.

ミニマリストは奈良時代にどう生きるか~「あおによし、それもよし」を読む~

ミニマリスト、という生き方がある。シンプルライフの今風というか徹底的にムダな者を持たないライフスタイルのひとつだ。徹底的にやる人は、ワンルームマンションにほとんど家具を持たず、究極的には冷蔵庫さえ持たない。

「あおによし、それもよし」の主人公の山上氏は、そんなミニマルライフを極めていた現代の社会人だった。「だった」というのは、それがなぜか奈良時代にタイムスリップしてきてしまったからだ。

現代人とすれば、ネットもないしコンビニもないし、エアコンもないわけだが、そこはミニマリスト、「この暮らし最高じゃん!」と喜んで奈良時代の生活を満喫し始める。なぜか下級役人の小野老(小野妹子の子孫)と暮らすのだが、ご飯に鰯だけの食膳も喜ぶし(無農薬だとか感動する)、狭い部屋でも気にしないし、奈良時代にフィットしてしまう。

ミニマリストとしての感動を「あおによし」と言ったら、小野老がそれを宮中で流行させてしまうなど(「あおによし奈良の都の咲く花の匂うがごとく今盛りなり」は小野老の歌として今に残る)、なぜか奈良時代のトレンドメーカーになってしまうというマンガ。

楽しい奈良時代ライフ、と思ったら藤原不比等は人気ミニマリストブロガー(現代では消息不明)の藤原さんが奈良時代にタイムスリップした姿だということに気がついたり展開が始まる。しかも藤原さん、奈良時代では贅沢貴族ライフを満喫していて、ミニマリストの面影もなかったりして。

また、名字が「山上」だったということからぴんと来た人もいるだろうが、最新刊の2巻では「山於億良」に成り代わることになってしまう。実在の人物をまさかの成り代わりをしてしまうということは、将来貧窮問答歌も詠うことになるのだろうか。確かになんとなくミニマリスト風といえなくもない(物よりも子どもが大事みたいなところが)。

最初は「奈良時代ライフ=ミニマリストの至高」みたいなシチュエーションに笑って読めていたのだが、第2巻になって展開が広がってきた。1巻は一発ネタの勢いで読めるが、2巻と3巻はそれをどうふくらませ展開させていくかは難しいところだ。本作は2巻でとうとう山於億良となってしまい、そのステップを踏み出したといえる。

2巻の後半では歴史上政変に名を残す長屋王と仲良くなってしまったり、藤原不比等との不仲も高まってきた(ミニマリストを裏切ったことへの反感のほうが強いのだけれど)。政治と無縁というわけには行かない未来も予想させる。それでもライフスタイルをミニマリストとして追求し続けてほしいなとも思う。3巻でさらに魅力ある世界を展開できるのか、それが楽しみといえる。オススメである。

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