ページをめくるごと、息が詰まる悦び~「君だけが光」 – 8th FEB.

ページをめくるごと、息が詰まる悦び~「君だけが光」

シギサワカヤという漫画家は一言で言うと読者の息を詰まらせる作家である。

大好きな作家のひとりだが、一気に1冊を読み切ることはまずない。数話ずつ読んでは一度本を置くことが多い。切なさが強くて、息が詰まるからだ。

そもそも本を手に取るのに時間をかけてしまうこともある。実際この本、一昨年の発行だから、買ってから2年も、目の見える範囲に置き続けていたことになる。かといって、書架の後ろに押し込むわけでもなかった。そして書店で新刊が目につけばレジに持っていく。不思議な作家である。

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白泉社が「楽園」という季刊ペースで出しているマンガ雑誌を持っている。これがまた独自色のある作家を多数抱えていておもしろい。男性向けと女性向けの間を狙っている感じもおもしろいし、少女マンガで名を馳せる白泉社の雑誌群の中でもユニークな位置づけの雑誌だ(新婚カップルのコメディ「ふたりH」も白泉社だったりして、この会社実はあなどれない)。シギサワカヤはこの「楽園」の常連作家である。

シギサワカヤの描く世界は大人の勘定、大人の恋愛が基本だ。男女の恋愛模様の感情をざらりとした触感で描く。それがお話だと分かっていても、その不思議なリアリティに虜になってしまう。

恋愛のゴタゴタ、感情のもつれ、セックスの快楽などを織り交ぜつつ、理想だけでなく現実の物語として描いている手腕はいつも感心させられる。

今回の1冊は、そんな彼女(たぶん女性作家ではないかと思う)が百合設定、つまり女性と女性の恋愛模様を描く連作短編などをまとめているところが特徴だ。さて、男女の恋愛マンガの名手はどんなGL(ガールズラブの略)を描くのかなと思ってみたら、これまた色気があって実によかった。

彼女の描く女性の表情にはなんというか憂いがあって色気がある。それがまた、いい。男性との関係性の中で外した視線と憂いが読者を惹き付けるのだが、女性と女性の恋愛でもその色気は変わらないようだ。

今ふと思ったが、彼女の描く世界は同人誌の世界に近いのかもしれない。一時期、高河ゆんが描いていたような世界にもどこか重なるのは、そういうバッググランドがあるのかもしれない。

シギサワカヤ、オススメです。

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