40年ほのぼの作品を書き続けることの凄み~「竹本泉作品」 竹本泉という少女漫画家がいる。最初は「なかよし」の作家として、途中からはオタク系マンガ雑誌からネコマンガ雑誌まで広く活躍の場を広げ、今に至っている。 デビューが1981年ということは、来年には40周年ということになるのだが、この人のすごいところは、作品をコンスタントに書き続けているということだ。 大御所になると作品の発刊ペースは落ちるものだ。あるいは新作がほとんど読めなくなる。ところがむしろ、彼の場合は2000年代がすごかった。一時期は数カ月に一度は新刊が発売されるほどで、しかもそのクオリティはいずれも高いものだった。 今日は「竹本泉作品」「竹本泉ワールド」をレビューしてみたいと思う。 View this post on Instagram A post shared by Syunsuke Yamasaki (@yam_syun) このラインより上のエリアが無料で表示されます。 彼のキャリアをざっくりいえば、前半の3分の1くらいは少女漫画家として「なかよし」で書いていた。「あんみつ姫」をご存知の方は多いと思う。 しかし、アスキー系のマンガ雑誌などで「ほんわかSF」を書き出したほうが作家としてのキャリアは長くなり、また作品数も多くなった。 実は彼(男性である)は、相当のSF読みであり、その背景を活かしつつ、少女漫画家としての作風と絵柄をもって「ほんわかとしたSF作品」を次々と書き始めたのだ。 編集者もそれを期待した風があるし、本人ものびのびと「竹本泉ワールド」を展開した。「よみきりもの」というシリーズがあるのだが、ほとんど1話完結の短編SF集となっていて、これを月刊で書き続けていたと考えるとその熱量には頭が下がる。 SFといっても、完全に星間飛行を可能とした世界を舞台とするかと思えば、普通に学園ものの延長で描くこともある。しかしいずれも「SF」であり「ほのぼの」なのだ。 ブレードランナーやスターウォーズではなく、日常生活とSFをがっちりつなげて描くのが彼のすごいところだ。 といっても、内容はそう難しいことはない。アイデアひとつで短編を一気に書き上げるような手法が彼の得意技で、読む方もコーヒーブレイクくらいの時間で気軽に読めて、かつ心安らぐ読後感となる。いつも新刊を楽しみにしている作家なのである。 最新作が先日出た。彼くらいの作家となると「これが最高傑作か?」といわれると過去の名作も多すぎて断言することは難しい。むしろ気負いなくいつもの作風でいつもの「ほんわかSF」を書き続けていることのほうがうれしいと感じる。 ところで彼は、愛猫家としても知られていて、ネコマンガ雑誌にもいくつかコミックエッセイを寄せている。これがまたよいのだが、ネコ好きとSFをミックスした「ねこめ~わく」というシリーズも持っていて、これがまたおもしろい。編集者にも愛されているのか、掲載誌をいくつも変えつつ連載をつむいでいて、機会があれば読んでいただければと思う。 この先、どこまで竹本泉作品を読み続けられるかは分からない。年齢に伴う体力的な問題もある。本人の意欲がどこまで続くのかという問題もある。幸いにして一定のファン層(とおそらくファンでもある編集者層)があるので掲載誌には困らなさそうだ。 彼の存在を知ってはいたが、しばらく離れていた人にも、ここまでまったく、竹本泉ワールドを知らずに過ごしてきた人にも、そしてもちろん、大ファンで「新刊情報ありがとう!」という人にも、 オススメです。 試し読み https://comic-action.com/episode/13933686331621586042Amazon紙書籍購入 https://□ama□/3okpBnFKindle版電子書籍購入 https://□ama□/3dRWaEFヤマサキさんのコミック蔵書リスト https://booklog.jp/users/yamsyun 関連 投稿ナビゲーション 書店員の推しが新しいマンガと出会うきっかけになる~「果ての星通信」銀行の窓口のお姉さんもお仕事している会社員のひとり~「銀子の窓口」