この2色刷りは発明だ!~「最近雇ったメイドが怪しい」 – 8th FEB.

この2色刷りは発明だ!~「最近雇ったメイドが怪しい」

メイドマンガはもう山ほどある、といってもいい。本格的にイギリスのメイドを描いた「エマ」のあと、日本人のメイドへの憧憬は爆発、次々とファンタジーコミックにメイドが登場することとなった。そしてまたメイド喫茶もその流れにあって一定の普及を見た。

今回紹介の1冊は、そうした流れにありつつ、ちょっと独自の「発明」を備えてもいることが興味深い。それは「色」だ。

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本作は没落した貴族の御曹司(お坊ちゃま)のところに働くあるメイドのお話。お坊ちゃまの彼は、メイドの彼女のことが気になって仕方がないのだが、それが恋なのかも知らないままにつねに視線に彼女を捉えてしまう。

そして、からかってくるメイドに直球で、「気になって仕方ないのだからしょうがないだろう!」と言い切って、彼女を赤面させてしまう。

ま、基本的な話はこんな感じ。だがそれでいいのだ。

ストーリーとして考えた場合、彼の家が没落してしまった理由や、彼女がなぜひとり残ってメイドとして仕えているのか、といった背景は徐々に描かれている。しかし、それよりもやはり「メイドはかわいいよね」がこのコミックの基本であることは疑いない。

作者の絵柄もまたかわいいものであるから、こうしたマンガによく合っている。しかし、日本はこうした萌え系イラストを書ける作家さんがいかに豊富なことか。前世紀には誰も想像しなかった未来だろう。

……もちろん、メイドコミックいいよね、だけで本作を紹介したというわけではない。

本作のユニークなところは「2色」の使い方だ。実はこのコミック、全ページ2色刷りだ。紫色をあえて重ねているのだがなんてぜいたくなのだろう、と思って最初は読み始めていた。

すると、その2色刷りは「メイドの彼女の瞳」にもっぱら用いられて、背景や服飾のためにはほとんど使われていないことに気がついた。

時々、2色が背景等にも使われるものの、読者の印象に残るのは「瞳」の色づけだ。それはとても印象的で、彼女の魅惑的なキャラクターを強調している。お坊ちゃんが惹き付けられる魅力を示してもいる。

つまり、シンプルな2色刷りが強い効果を発揮しているのだ。いやー、これはちょっとした発明かもしれない。ここまで意識的に2色を設定したのなら、作者か編集者の大手柄だと思う。

今試しに、スクエニのホームページで第一話をチェックしてみたのだが、最初の数ページがカラーで、残りはモノクロだ(掲載誌はガンガンJOKERのよう)。WEBで見られるのに2色にしていないということは最初から狙っていたのではないのかもしれない。

コミック版をベースにしていると思われる、ニコニコ漫画などは、瞳だけを2色化している。WEBコミックなのだからカラーはいくらでも使えるわけで、やはりコミック化したときに、「発明」があったのかもしれない、なんて考えてしまう。

WEBコミックのアプリやサイトで見るのもいい。でもこの作品は、紙のコミックで2色刷を楽しんでみることをオススメしたい。印刷技術をこんなにゼイタクにつかっているなんて、としみじみ感じてしまう。

モノクロだから紙のコミックはWEBコミックに勝てない、なんてことはないのだ。

オススメです。

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