終戦直後のTOKYOをスイングする~「スインギンドラゴンタイガーブギ」 – 8th FEB.

終戦直後のTOKYOをスイングする~「スインギンドラゴンタイガーブギ」

戦後のTOKYOに出てきた田舎者の彼女が出会ったのは、進駐軍を相手にジャズを演奏するバンドだった。そして姉の謎を追う彼女は奇縁からバンドボーカルとなり、大きなうねりに巻き込まれていく。

連載が始まったばかりながら、これは楽しみ!と思わせる一作を取り上げてみたい。

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今の日本人にとって、第二次世界大戦終戦後の日本というのは物語の舞台としてちょうどいいのかもしれない。当時の苦しさをリアルに想像してしまう世代からは少し離れた。また少し時代が離れた分、冷静に当時のことを分析し描写できる落ち着きも得た。そして現代日本にはもう生じ得ないであろう活力とカオスの空間がそこには広がっている。

過去、戦後の東京を舞台としたコミックを取り上げたことがあるが(極東事変)、本作は「ジャズ」がテーマだ。

主人公の女子は耳で覚えたジャズの歌い手。調子を崩した姉の謎が、ジャズにあると東京に出てきたが、解決のきっかけとなるはずの男を見つけたところ、姉と一緒にいたはずの時期の記憶喪失に苦しんでいた。

最初は反目しつつも、ジャズバンドのベースとボーカルのふたりが徐々につながりを見せ始める。第1巻では勢いよくそんな設定を展開し、気持ちよく2巻への期待を持たせている。

進駐軍の基地(朝霞など)へ出かけてジャズを演奏して日銭を稼いだり、そこに仲介者が現れて中抜きをしていたり、いろんな戦後の姿が生き生きと描かれながら、そこにストーリーが徐々に展開し始めるのはおもしろい。

絵柄もちょうどよい「マンガ」な絵なので、気持ちよくストーリーを楽しめる。週刊モーニング連載、ということは、テンポ良くストーリーも進みそうだ。月刊誌連載だと次のコミックまで1年以上待つことがあるが、その点週刊誌連載は次々続刊がでるので、次の話がどんどんスイングしていきそうだ。

ところで、当時のジャズスタンダードを中心としたプレイリストがオフィシャルで公開されている、というのもおもしろいところ。SpotifyとAppleMusicで配信されているが、今の世代の感覚からすると音楽はかなりシンプルで、当時の雰囲気が少し垣間見えて興味深い。

プレイリストはこちらから
https://umusic.digital/yjkdhr/

いずれにせよ、1巻を手に取って「おー、久しぶりにこれは続刊が楽しみなオリジナル!」と思える作品を見つけた気分だ。連載誌が同じモーニングでいえば「GIANT KILLING」を見いだしたときと同じようなわくわく感がある。

基本的にコミックでまとめて読むのが好きなタイプだが、「今からならリアルタイムで連載を追いかけていくのもいいかな?」と悩ませる。公式アプリなどを使えば、穴も埋められそうだ……なんて悩みもまたうれしい悩みである。

まだ始まったばかりながら、勢いもあって続刊が楽しみだ。

オススメです。

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