地図好き地味女子と猫好き草食男子が偽装結婚>~「結婚するって、本当ですか」 – 8th FEB.

地図好き地味女子と猫好き草食男子が偽装結婚>~「結婚するって、本当ですか」

若木民喜氏といえば「神のみぞ知るセカイ」というマンガの作者として有名だ。そんな氏の新作は「地味なふたりの偽装結婚」だとしたらどう思われるだろうか。

作家としてはもう有名どころではあり私が紹介する必要はないかもしれないが、あえてブックレビューに取り上げてみたい。

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若木民喜氏は「神のみ……」以降、いくつかの作品を生み出している。例えば「ねじの人々」といった哲学ネタのマンガを書いていたりする。大作ではないがなかなか楽しい試みだった。実は彼は京都大学卒なのだが哲学の専修らしい。

そう考えてみると、「神のみ…」もゲーマー男子を主人公にしたただのラブコメというにはなにげに深みのある作品だったと思う。

そんな彼が新作で取り上げるのは「偽装結婚」というテーマ。しかも、飼い猫以外にはほとんど趣味のない草食男子と地図とひとり旅行を愛する地味女子のふたりがその主人公たちだ。

旅行代理店に勤めるふたり、職場にもなじめず、ひとりの生活を唯一の安心の場としているはずのふたりだったのだが、「独身者はイルクーツクの支店への異動を募る!」という上司の宣言により、偽装結婚を決意することに。

地味なふたりの結婚話だから、適当に流せるかと思いきや、職場で思いっきり祝福されて戸惑ってみたり、まじめにプロポーズまでのストーリーを考え出して、ドキドキしてみたり、「おひとりさまを守る」ためにふたりでがんばる」ようになってくる。

個人的には彼女のほうのキャラづくりが「地図好き女子」というのがツボだ。最初の登場シーンなんか「行きつけの書店に1万分の1地図が入荷しなくなってショックを受ける」だったりするし。

個人的には結婚は「ちょっと狙って」「あとは勢い」だと思っている。乱暴なようだが、普通の人が普通の相手を見つけて結婚するのは「ちょっと狙って」行動すれば難しくはない。婚活だってあるし、ゼイタクをいわず身の丈にあった結婚なら多くの人にチャンスはある。

一方で、まじめに結婚を考えすぎるといつまでたっても決断はできない。昔に比べて今は、いろんな情報が見えてしまうからだ。子どもを育て上げるために2000万円以上かかる、とか、結婚したら自由に使える時間や予算が減ってしまうとか、そういう問題を先に解決してしまおうとすれば、結婚に踏み込むことをためらってしまうのもまた当然のことだ。そこは勢いが必要だ。

偽装結婚を目指すふたりは「そもそもつきあっていない」のだから、コメディになるのは当然で、今後の展開も楽しみだ。途中で謎の男の影のちらつき始めた(彼女はまったくその気がないが、そいつは彼女のことがとても気になっている様子)。

「神のみ……」のような大長編は必要ないと思うので、期間限定(1年後にイルクーツク赴任なので)のラブコメを楽しませていただきたい。オススメです。


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