1999年の夏、あなたは何をしていた?~「すべての人類を破壊する。それらは再生できない。」 – 8th FEB.

1999年の夏、あなたは何をしていた?~「すべての人類を破壊する。それらは再生できない。」

1999年の夏、ノストラダムスの大予言では終末が訪れるとされていた。本当に信じていたというわけではないだろうが、冷戦が続く間は核戦争で世界が灰燼に帰すことは決してあり得ない話ではなかった。

そんなとき青春を過ごした話を20年後に振り返ってみるとこれはなかなかおもしろい。しかもそこにカードゲームとライバルとなる彼女がいたならなおさらだ。今日はそんな1冊を取り上げてみる。

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1999年に恐怖の大王が訪れる、というのはおそらく日本人なら誰でも知っていたことだろう。それが何かはよく分からないが、ノストラダムスの大予言のいくつかが実際に実現していると説明されれば、本当にそれが起きるかもしれないなというだけの雰囲気はあった。

ベルリンの壁が崩壊し、ゴルバチョフ大統領のペレストロイカ路線により、ようやく冷戦を終えた時代だったが、核兵器はまだ世の中にたくさんあって、「いつボタンが押されてしまうか」というそこはかとない恐怖は残っていた。

恐怖の大王なり核兵器の使用なり、「自分の考えや努力とは無関係に、自分の人生が終わってしまうかもしれない」というのは、自分の無力さを知ることでもあり、また自分の未来を作るモチベーションを失うことでもあった。

当時、私はもう社会人になっていたので、世界が終わるとは思っていなかったけれど、でも仕事はあまり順調とはいえず、気持ちがすさんでいたことを思い出す。

それがもし、学生であったなら、気持ちはさらに複雑だろう。受験で自分を追い込む必要と、社会が破壊される可能性とを天秤にかけるのだから。

もちろん、中高生なら、ノストラダムスを笑いつつ、ゲームやテレビ、マンガやクラスメイトの噂話にうつつを抜かす。このマンガでも、M:TG(マジック・ザ・ギャザリング)というカードゲームがそのフレーバーとして登場する。

カードゲームと、テストの成績でもライバルだった同学年の女の子(実はM:TGプレイヤー)と、そして徐々に近づく「1999年の夏」、そして受験への焦燥とが混ざり合うのがこのマンガの面白さだ。

今のところ、カードゲームで全国大会に登場するようにステップアップしていくのがメインストーリーのようだが、「最後のクリスマス(199年夏に世界が終われば、1998年のクリスマスが最後になる)」イベントが起きたり、もうひとりのM:TGプレイヤーの女の子が現れたりとラブコメ的要素も高校生ライフを盛り上げる。

1998年から1999年の社会風俗もよく描いている。もちろんそこにはスマホはないし、インターネットがようやく誕生したばかりの世界だ。テレビCMのまねをしたり、ヒットソングをカラオケボックスで歌ったりとした、風景はとても懐かしく感じる。一方で数年で変化する部分もあったりして、よく調べて「ちょっと田舎の町の高校生ライフ」を描いているなと思う。

ストーリーは「1998年のクリスマス」を経て、いよいよ1999年に突入した。主人公たちにはいよいよ、アンゴルモアの恐怖の大王と、受験というまた別の恐怖の大王が近づいてくる。

コミックのねらいはたぶん、「日本一のM:TG使いになる!」ではなさそうなので、これからの展開がまた楽しみだ。勢いのついているところでぜひ、今から読んでみてはどうか。

ところで、作画の横田 卓馬氏は、強弱のついた太い主線が特徴的だが、「ポンコツ風紀委員とスカート丈が不適切なJKの話」という学園ラブコメのほうもおもしろい。あわせてオススメだ。

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