藤崎竜は道原かつみを超えられるか~「銀河英雄伝説」 初読した1991年、まさか30年後に「銀河英雄伝説」をアニメとコミックの両面で「新作」として楽しめることになるとは思わなかった。しかしこのコミカライズは、過去にもないオリジナリティを保ちつつ、過去を超えようとしている。今さらながらあえてレビューしてみたい。 View this post on Instagram A post shared by Syunsuke Yamasaki (@yam_syun) 「銀河英雄伝説」といえば、ある程度オタクをしているとどこかで触れざるを得ない通過儀礼のようなものだ(以下、いくつかの固有名詞は説明を省略するのであしからず)。原典としての小説版、ビデオテープ時代に刊行されたアニメ版、そして道原かつみ版の流麗なコミック版…… しかし今、2020年代に突入している時代に、タブレットやホログラフ、3Dモデルなどが登場する「新しい銀河英雄伝説」がつむがれていることに驚かされる。 宇宙戦艦は30年たって現実には誕生しなかったけれど、生活や戦艦装備などにはきちんと30年の変化が反映さそのメカニックは現代のハードウェアに対応した。そしてもちろんハイビジョン映像により画面の美しさも大きく進化した。 新たなテレビアニメ版は、ようやくキルヒアイスの死を迎えようとする段階であるが(NHKで放送中)、人気を取っているようだから、これから何年もかけて完結に向けていくことになるだろう。楽しみである。 一方、コミック版はかつて道原かつみ氏が描いてきたバージョンの印象が強かった。ラインハルトの豪奢な金髪の印象はアニメよりも美しく記憶に残っている。しかし、掲載誌の移籍や休刊があったりして、ラグナロク作戦の途中でコミカライズは中断してしまっていた。 今、大長編のコミカライズという難行をチャレンジしているのは「封神演義」で有名な藤崎竜氏である(以下、藤崎版、道原版とコミカライズを区別する)。 藤崎版は、CGによる艦隊運用の表現を試みたり(ロイエンタールの艦隊運用のビジュアル化などはすごいアイデアだった)、外伝を取り込んでラインハルトの年少時代から描き始めたりといろんな工夫がされている。最新刊ではエヴァンゼリン(疾風ウォルフの妻)が初登場したが、あえて美形にしていないのには恐れ入った。 藤崎版はここまで週刊連載のヤングジャンプにて順調に話を進めてきたが、キルヒアイスの死をもって、月刊誌であるウルトラジャンプに移籍することになった。ここでちょっと減速しないか心配になるところだ(キルヒアイスの死はご存知の通り大きな山であり喪失感の大きいイベントなので)。 しかし、今回紹介する最新刊ではラグナロク作戦に突入、フェザーン回廊突破についても新しい展開を示している。艦隊戦をじっくりビジュアル化しているのはアニメ版に負けていないし、道原版とも一線を画しているところ。 そして、できれば、道原版になしえなかった、完結までのコミカライズを期待したい。ライトノベルのコミカライズはしばしば、完結までたどり着けないことがあるのだが、これはいかにももったいないと思うできばえだ(道原版も本当にもったいなかったと思う)。 新アニメ版もいいが、コミカライズもこれに負けないできばえとなっている。「銀英伝?なつかしー」という人にはもちろんお勧めするし、今まで未読だった人にもお勧めする。 試し読み https://youngjump.jp/manga/gineiden/Amazon紙書籍購入 https://□ama□/3i1fwIsKindle版電子書籍購入 https://□ama□/2PgNNHjヤマサキさんのコミック蔵書リスト https://booklog.jp/users/yamsyun 関連 投稿ナビゲーション 印刷屋さんはみんながんばってます!~「刷ったもんだ」1999年の夏、あなたは何をしていた?~「すべての人類を破壊する。それらは再生できない。」