印刷屋さんはみんながんばってます!~「刷ったもんだ」 – 8th FEB.

印刷屋さんはみんながんばってます!~「刷ったもんだ」

以前「今日も下版はできません!」というWEBコミックが話題となった。今回紹介するのも、印刷屋さんの裏側を描くマンガである。こちらは中堅印刷屋さんなので同人誌もずいぶん取り扱っているのがちょっとおもしろい。紹介してみたい。


WEBコミックで印刷屋さんの苦労を描く「今日も下版はできません!」というマンガがある。これは「いとしの印刷ボーイズ」  として書籍化もされているし、今も連載継続中のようだ。内容がかなりマニアックでおもしろかった。

それ以外にも、「いぬにほん印刷製本部」とか「新刊、刷り上がりました!」とか、時々印刷屋さんを描くマンガが誕生している。個人的には仕事と関わることもあって、つい手に取ってしまうジャンルのひとつだ。

今回の作品も、基本構図は「いろんな失敗や難題を乗り越えていく、お仕事マンガ」ということは変わらないが、主人公が元ヤンキーだったり、同人誌や同人グッズ、小学校の印刷物などが登場するのは他とちょっと違っておもしろい(逆にいえば、商業誌やプロのデザイナーとやりとりする案件は出てこない)。

私の住んでいるあたりは、大小の印刷屋が並ぶ。凸版印刷やトーハンもあるし、小さな印刷屋がいつも忙しそうにしていて、昼間はインクの匂いも漂っている。

著者がどんなにいいものを書いてもデザイナーがきれいにデザインしてくれて本の体裁が整う。そして印刷屋さんがきれいに書籍にしてくれなければ書店には並ばない。

印刷は書籍だけではない。書店流通によらない印刷物もたくさんある。ポスターだったり、学校の文集や卒アルだったり、そして同人誌だったり。

同人誌といえば、町の印刷屋さんは苦境に陥っているそうだ。同人誌即売会がほとんど中止になっているためだ。コミックマーケットは今年の冬の開催もすでに断念している。そのため、多くの同人サークルが印刷の注文を控えているそうだ。

趣味の領域は、生活に必須ではないから、こういう時期の制作者側の減少はありうる。一方で、印刷屋さんにとってはビジネスそのものの減少というわけだ。

実は本作の1巻ラストでは同人誌グッズを梱包するようなエピソードが出てきて、2巻はコミケの現場に顔を出すエピソードが予告されている(同人誌は印刷所から会場へ直接搬入することが多い)。2巻の発売は今年の秋だそうだ。

2巻を読むのはちょっと不思議な感覚かもしれない。何せ実際の世の中では同人誌の市場は冷え切っているのに、にぎやかな即売会とその裏方としての印刷屋さんの苦労話が描かれるのだから。

でも、きっと、数年もたてば、にぎやかな同人誌即売会は戻ってくるに違いない。

そんなことを思いつつ、1巻に手を出してみていただければ。オススメです。

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