世界の終わりがくるなら彼女はぼくと過ごしたかった~「羊角のマジョロミ」 – 8th FEB.

世界の終わりがくるなら彼女はぼくと過ごしたかった~「羊角のマジョロミ」

ある日、ぼくが起きると全人類は眠りについていて、起きていたのは、なぜか羊角をもつ彼女だけだった。

そんなベタな設定話もマンガ家は自分の個性で独自の話を描けるのだからすごい。そして作者はその個性で私たちを惹き付ける。


基本設定はこんな感じ。主人公の男子が目を覚ますとそこは生徒全員が眠りについた学校だった。ようやく会えたのはなじみの後輩女子たったひとり。そして彼女は、この世界を作り出したのは自分なのだという。

確かに彼女には羊の角が生えていて、羊を操ったり、魔法を使ってみせたりする。

最初は驚いた彼も、むしろ落ち着きのある静かな世界を心地よく思い始めたところ、ストーリーは驚きの展開を見せ始める。

……ま、こういうあらすじだけを述べても、それ自体は特別なものではない。全人類がいなくなっていた、とか、全人類が眠りについてたなんて話はよくある。過去にレビューした作品にもあったはずだ。

しかし、そんな話も絵柄、細かい設定、ビジュアルでいくらでもバリエーションは誕生しうる。そしてオリジナリティは存在しうる。今作もそんなことを感じさせてくれるお話だ。

本作の作者は、特殊なセンスで話を作り、筆で書いたかのような独自の線描で印象に残る。実はちょっと前に出した短編集がちょっと衝撃的だった。

「それはただの先輩のチンコ」というタイトルで、憧れて好きなあまり、彼の陰茎だけを切り取って手元に置いて行うという、よく分からない話をぐいぐい読ませるものだった。そしてグロくはない展開という不思議さ。

コミックを店頭で見て、WEB連載分を読んだあと、買うかどうか悩みに悩んで、買わなかった。でもしばらく記憶に残っていて、買わなかったことをちょっと後悔していた。
(一話がここで読める)
http://webcomic.ohtabooks.com/senpai/

本作は先の短編集ほど「特殊」な話ではないので、男女のジュブナイルファンタジーとして気持ちよく読める(こうしてブックレビューとしても薦めやすい)。そして少しずつふたりの距離が近づくのも楽しい。

ところが、この作家がほんわかファンタジーにするわけがない。1巻のラスト近く、ストーリーは驚く展開を見せる。読んでもらえた人はおそらく、ぞくぞくっと鳥肌が立つ感触を味わうことになるだろう。

2巻がどう展開するのか、気になるところできれいに「続く」となる。今買ってまったく損はしないことは請け合う。

奇想にもバランスが必要だと思うが、本作はそれが商業的にも読者の心地よさとしても絶妙にいいところで話が展開しているようだ。

これはオススメです。

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