出だしも終わりもばっちりなのに、2巻完結があまりにももったいないラブコメ~「こじらせ☆ルサンチガール」 今回紹介するのは2巻完結があまりにももったいないと思う一作。絵がよく、話もおもしろかったのに、なぜ3~4巻まで育てられなかったのか。そんな気持ちも抱えつつ、未読の方へあえて紹介をしてみたい。 View this post on Instagram A post shared by Syunsuke Yamasaki (@yam_syun) マンガと漫画家を育てるというのはなかなか難しいことだ。今はなりたい人はいくらでもいるし、絵だけならもうセミプロレベルの人だらけだ。Pixivなんかをみているとカット絵だけならプロといえる人がたくさんいることに本当に驚かされる。 媒体も昔よりたくさんある。特に増えたのはネットを使った配信だろう。WEB経由、アプリ経由でコミックは大量に消費されている。チャンスがたくさんあるのはいいことだが、過去作も消費しつつ、新作も投入しているので、勝負はなかなか大変だ。 そして媒体が増えたことがすなわち「いい編集者も増えた」ことにはならないのが悩ましい。作家を新人から育てるようなことは、ちょっとした時間と根気が必要になる。 今回紹介する「こじらせ☆ルサンチガール」はPixivコミックからの発売。つまりWEBとアプリでの連載からの紙コミックの発売をしたケースだ。 マンガ自体は、大学生のラブコメが基調になっている。実は経済的に楽ではないもののバイトをたっぷり入れて、パーフェクトな女子大生を演じている主人公女子。心の中が空っぽでその分誰にも笑顔で当たり障りなく接することがうまい世渡り上手な男子のコメディタッチの恋愛漫画だ。 女子のほうは、完璧を装うためなら努力を惜しまない。インスタ映えするポイントやショットを作るためなら努力を惜しまず、また見栄えのいい服をきちんと着るためになら警備員バイトさえ厭わない。美人が警備員やっているところを主人公男子にバレたとき「こいつ殺すか?」みたいなことを妄想したり、コメディ的にもうまく笑わせてくれる。 ところが、徹底的に隠し通してきた裏の顔をバレて、交際を申し込むことになった彼女が、「契約書を作るわ」と言い出したり、そのギャップがいい感じで展開してきたと思ったら、あっという間に彼女の悩みを解決され、彼の抱えた心の闇も明かされて、ふたりはあっという間にハッピーエンドへ至ってしまった。 1巻は「起」をしっかり描き、2巻はある意味「最終刊」をしっかり描いていいる。巻末ではエピローグまで描かれ気持ちよく終わっているのだけれど、ラブコメ的には「真ん中」が足りないのだ。 「起承転結」の「承」の部分を引き延ばしていろんなエピソードを楽しんだり、ときには「承転」が何度かイベントとして起きたりするのが、ラブコメマンガの醍醐味だと思うのだけれど、その「いい意味での引き延ばし」がなかったのだ。 そして、この作者のセンスでその「真ん中」「引き延ばし」が描かれていたら、きっとそれは少年誌や青年誌的に楽しく読めたのだろうにと思える。だから、実にもったいないなあと思うのだ。 装丁もすごくスマートで、1巻は色使いを抑えつつ、コミックの雰囲気をよく出していたと思う。 ほら、WEBやアプリのコミックって「掲載期間終了」となって真ん中の話数が読めないことがあるじゃない。そんな感じで、「あいだの数巻読み飛ばしたと思って」ぜひ手に取っていただければと思う。 作家さんの次回作にとても期待を込めて、オススメです。 試し読み https://comic.pixiv.net/works/5370Amazon紙書籍購入 https://□ama□/3frfDfqKindle版電子書籍購入 https://□ama□/2CvsYoAヤマサキさんのコミック蔵書リスト https://booklog.jp/users/yamsyun 関連 投稿ナビゲーション 1980年代ラブなふたりの2010年代恋愛?~「スローモーションをもう一度」世界の終わりがくるなら彼女はぼくと過ごしたかった~「羊角のマジョロミ」