本好きはつながることができる~「バーナード嬢、曰く。」 簡単にいってしまえば「本好きあるあるマンガ」だが、実は「文系青春マンガ」でもある。そのバランス加減が絶妙で、新刊が出るのを首を長くして待っている1冊。今回はそんな作品の新刊を取り上げてみよう。 View this post on Instagram A post shared by Syunsuke Yamasaki (@yam_syun) このラインより上のエリアが無料で表示されます。 学校の同級生が4人。主人公の女子は本を読んだフリをして格好つけたがり(といっても読書量は図書館に来ない生徒よりははるかに上)。2人目はSFマニアの域にある黒髪ロングの女子。3人目は図書委員をしているミステリー好き女子。そして最後にひとり、男子が混じる。彼はベストセラーを旬を過ぎた頃に読むのが好き。 ということで、学校の図書館に顔を合わせた常連たちが、それぞれの好みを披露したり、若気の至りで否定してみたり、しかし時々青春の時間を過ごしたりする。そんなマンガが「バーナード嬢、曰く」である。 最初は、本好きあるある要素が強いマンガだった。そしてメイン主人公の女子が、読まずに知ったかぶりをしたがるキャラ(知ったかぶりをするキャラ、ではなく「したがる」キャラ)なので、それをネタにする展開が多かった。 しかし途中から、図書室に集まる学生あるある的展開を示し始め、話がぐっと面白さを増してきた。台風で帰宅できなくなった4人が図書室でそれぞれ読書する話だったり、帰省中のひとりともうひとりが読書をベースにSMSで会話したり、そういう一緒の時間を過ごす愉しさが描かれ始めたのだ。 私は高校生のとき、地理歴史研究会に属していたが、同じサークルでよく図書室で遊んでいたことを懐かしく思い出す。空き時間にボードゲーム(ホテルチェーンの買収合戦を行う「アクワイヤ」というゲーム)を遊んでいたら、漢文の先生に見つかってコマの一部をとられてしまったことも忘れがたい。 高校の図書館というには規模の大きい施設で、普通の市区の中央図書館に近い蔵書量を誇っていた。それが学校の売りになっていたが、文化系な我々はそこでいろんな刺激を受けたものだ。 ――私の個人的図書館経験はともかくとして、図書館にいろんな思い入れがある人は多いはずだ。自分の青春を重ねつつ、彼女らの本好きあるあるネタを楽しむのも楽しい(古書をあさる話とか、装丁で善し悪しを語る話とか、ついうなづいてしまう)。 取り上げられる作品も多彩だ。古典SF、新作SFを中心としているものの、メジャーな純文学、新人作家などいろいろネタに取り上げている。ハードなSFの話をしたかと思えば、水嶋ヒロの「KAGEROU」とか「恋空」といった新しめのベストセラーもネタにが出てくる。この書籍チョイスの振り幅がまた楽しい。そして恋空をバカにすることもなく、ちゃんと1冊の書籍として扱っているところには好感が持てる。 この本の良さに気がついたのは3巻あたりだったか。最初は、絵柄が微妙だなあと思って、手をつけていなかった。ところが知人のすすめで手に取ってみたらこれが存外おもしろかった。絵柄を割り引いても、それ以上の面白さがあったのだ。 気になっていたが手に取れなかったというのは実にもったいないことだ。最近は立ち読み用に数話を無料公開しているのだからもっとチェックしなければと反省するきっかけにもなった1冊だったりする。 今、絵柄が微妙だと述べたが、続刊を追うごとに絵柄もこなれてきている。ときどき、とてもかわいい表情を見せることがあたり、ためらいや迷いを示した表情にはっとさせられることがある。徐々に絵が上手くなっていく、というのは作家を追いかける面白さのひとつだが、その点でも続刊の読み甲斐がある。 正直私が改めておすすめをしなくても、知っている人も多かろう。だがまだ未読の人もあるはずだ。もしあなたがこの本を未読だとしたら……オススメである。 試し読み https://www.cmoa.jp/title/75203/Amazon紙書籍購入 https://□ama□/2SxDXTkKindle版電子書籍購入 https://□ama□/2VZjARcヤマサキさんのコミック蔵書リスト https://booklog.jp/users/yamsyun 関連 投稿ナビゲーション 言葉は力だ。そして言葉で私たちはつながるのだ。「キャッチャー・イン・ザ・ライム」本好き姫のふわふわファンタジー~「虫かぶり姫」