風景がスマホ写真時代の萌えマンガ~「ゆるきゃん△」 – 8th FEB.

風景がスマホ写真時代の萌えマンガ~「ゆるきゃん△」

アニメ化もされ、ドラマ化もされたという点では本枠の紹介から外れる大ヒット作だが、ちょっと書いてみたいネタがあるので取り上げてみようと思う。「ゆるきゃん△」である。

中身は基本的には萌えマンガの類いだ。しかし萌えマンガもただ萌えていればいいというわけではない。むしろそういうマンガは生き残れず、どこか話の中身が伴っている必要がある。

あの「けいおん!」だって4人のキャラ設定だけではなく、バンドと高校生活のストーリーあってだ。そしてちょっと独特のギャグセンスが絶妙だった。

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「ゆるきゃん△」は山梨の田舎暮らし女子高生とキャンプというテーマがハマった例だ。絵柄も過去にないちょっとユニークな線を描いている。

さて、このマンガを読んでいておもしろいのはスマホだ。「けいおん!」は実は10年以上前の話なのでスマホではない。調べてみると連載開始が2007年、日本でのiPhone発売が2008年だそうだ。

だから「けいおん!」のキャラが手にしているのはケータイ(折りたたみ式)だ。スマホでネット検索はしない。

ところが「ゆるきゃん△」はスマホネイティブの時代だから、登場人物はみんなスマホをもっている。その場にいない人とも時々チャットのように会話する画面が出るし、旅行中に旅行先から写真がタイムラインに送られてくる。

キャンプ場の情報もネットで調べる。タブレットか手元のスマホで事前に調べ、移動中にも必要なら検索する。紙の雑誌、るるぶのようなものが出る幕はないわけだ(といいつつ、「ゆるきゃん△」特集るるぶが現実世界では発売されていたりする)。

また、風景の画角が、スマホカメラのイメージに近い。たとえばスマホのパノラマモードで撮影したとき、世界はまっすぐではなくカーブを描く。「ゆるきゃん△」で雄大な風景を示したとき、決まってまっすぐ地平線を描かない。世界は歪んで写ってくるのだ。

それは自撮りの風景でもそうだ。周辺が歪むような絵柄をマンガのコマとしても描く。たぶん意図的にそうして描いているのだと思うが、むしろその歪んだ画端のラインが今風のマンガらしさにもつながっている。

そして気持ちよく読める理由は、悪い人間が出てこないからだ。そこは萌えマンガならではだ。女子がソロキャン(ひとりでキャンプ)していて、身の危険が生じる姿を描くことはない。登場人物もいい子たちばかりだし、酒乱かと思った先生キャラもキャンプの現場以外では酒は飲まないいい先生している。そういう「読みやすさ」には抜かりがない。萌えマンガはリラックスのため読むのであって、辛い現実など出現しなくていいのだから。

――ところで、「ゆるきゃん△」は大ヒットしたマンガだから昔から当然存在は知っていたのだが、なぜか私はここまで手を出さずにいた。なぜ今こんなレビューを熱く語っているかというと不思議な流れがあったからだ。

まず、1巻と2巻についてKindleUnlimitedで無料だったのをつい読んでしまい覚醒した。これはアニメ化などを機にプロモーションで行ったものだと思う。そこから、3巻以降を一気に買って追いかけることになった。

Amazonが15冊まとめ買いをすると15%還元をするというとんでもないプロモーションをしているので、これに合わせて2~3冊ずつ買い込んで読んでいく。

ちょうどアニメ化ドラマ化もあって、1月に9巻、3月に10巻が発売されたのだが、9巻と10巻をまとめ買いしたらクリアファイルをくれるキャンペーンがとらのあな(マンガ専門店)でやっていて、最後の最後に追いついた。これはラッキーであった(←販促キャンペーンで時々行われる手法だが、毎巻発売ごとに買っていた熱心なファンはその恩恵に預かれないため、悔しい思いをする)。

マンガというのは完結していたものでも、時々私たちの人生に登場して夢中にしてくれることがある。それがマンガや小説、アニメや映画の醍醐味だ。このタイミングで「ゆるきゃん△」と出会えたというのも悪くない。その入り口がKindleというのもまた、今どきのマンガのハマり方っぽくておもしろい。

すでに大ヒットを記録していることからもその面白さには疑いない。もちろん私自身もオススメである。

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