軍艦島で擬人化爆薬娘がかわいく奮闘する妙~「しょうあんと日々」 – 8th FEB.

軍艦島で擬人化爆薬娘がかわいく奮闘する妙~「しょうあんと日々」

擬人化マンガというジャンルがあるが、硝安爆薬が擬人化して、産業遺産として有名な軍艦島が舞台となると、これはちょっとおもしろい。今回紹介の一冊は「しょうあんの日々」だ。

軍艦島といえば産業遺産として名高い。かつては島の地下を掘り進めた国内有数の石炭炭鉱として名を馳せたが、徐々に石炭から石油の時代へ変わったことから閉山し、今では観光資源、そして歴史的資産として役割を変えつつある。

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軍艦島という名は、島の形とそこに建てられた鉄筋コンクリート建造物のシルエットが軍艦のようだったからだ。戦争中、アメリカ海軍が間違えて魚雷を発射したという話はまゆつばだが、確かに写真集などでは威風堂々たる軍艦にもみえる。

当時、軍艦島は活況を呈しており日本トップクラスの人口密度を擁していた。狭い島なので、建物を高層化することで面積を確保し多くの炭坑夫を抱えることとしたのだ。鉄筋コンクリートによる高層化建築は東京よりも早いという説もあるほどだ。

ところがそんな島も閉山後は立ち入り禁止となり放置された。一時期は廃墟マニアの憧れの土地でもあった。何せ無人島なのでそこに行くことすら簡単ではない。窓ガラスは台風で吹き飛び、コンクリートも徐々に腐食していく。崩落したフロアも多いという。

世界遺産のひとつとなった今は、観光船が定期的に上陸をし、安全な範囲で見学ができるようになった。一度は行ってみたいと思っているが、まだ夢を果たせずにいる場所のひとつだ。

さて前置きが長くなったが、「しょうあんの日々」の主人公はうち捨てられた硝安爆薬が擬人化したもの。人間の生活を懐かしみまねしてみるのがかわいい。

その背景は、廃墟と化した軍艦島だ。屋上にあった子どもの遊べる遊具、学校の跡、居住エリア、そして炭坑が主人公のフィールドとして描かれる。

一方で、和むばかりではない。別の爆薬が擬人化した仲間と出会うエピソードでは、せっかく出会えた仲間なのに本来の役割を果たして天に帰ってしまったりする(といっても本来の役目を果たしたともいえ、殺伐としている展開ではない)。

本書、最初はまったくノーチェックだったが店頭で「軍艦島」と書かれた帯に気がついて2冊を手にレジへ向かうこととなった。同時発売で1,2巻が出される場合、続刊が出ない可能性も大いにあるので、ここで躊躇してはいけないのだ。

萌えマンガというよりは「産業遺産好きだが萌えマンガはあまり手にしていない」というタイプの人が読んでみるといいのではないか。もちろん萌えマンガを通じて産業遺産の不思議を知るきっかけにもなるだろう。

オススメである。

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