偶然の出会いはある日突然やってくる~「そのときの彼女が今の妻です」 – 8th FEB.

偶然の出会いはある日突然やってくる~「そのときの彼女が今の妻です」

短編集やオムニバスを読むのは楽しい。数ページに作者の思いが濃縮されているからだ。これは長編作品のコミックを一冊読むよりゼイタクなことだと思う。

今回は同じシチュエーション「結婚する妻と出会うきっかけ」だけを連作した一冊を紹介したい。


このマンガの基本パターンは、オチの一コマが必ず、「その時の彼女が今の妻です」というセリフと花束のイラスト、そしてFInならぬ「婚」という文字で終わるというもの。

むしろそこまでどう話が展開されるかが勝負だ。いろんなシチュエーションが毎話展開される。たとえば、

・別れ話の後、ひとりで過ごす数日
・高校の昼休み
・コンビニのバイトの控え室
・職場の飲み会
・大学のサークル
・同窓会

などなど。それぞれどんなネタかは読んでみてのお楽しみだが、出会いあるあるなシチュエーションをちょっとひねって描いていておもしろい。

ここにはあげていないが、笑える逆転シチュエーションもいくつかあってそれもおもしろい。ここでそのネタを話し始めたいくらいだ。男性同士の……いや、ネタバレはやめておこう。

人との出会いは偶然が大きい。仮に高校の同級生と結婚したとしても、同じクラスだったり同じ部活だったり、何か偶然によって近づくことがないと結婚までは至らない。また顔を見知ったとしてもまたさらにもう一歩近づく偶然がないといけない。

自分を振り返ってみても、出会い(あるいは別れ)にはやっぱりいくつかの偶然があったなあと思う。もちろん縁を引き寄せる行動が必要なときもあるけれど、タイミングやシチュエーションに依存するところも少なくなかったように思う。

「あのとき、帰り道が一緒の西武線でなければ…」とか「あのとき、無理に親展させなかったことがむしろ良かった…」とか、思い返してみると不思議なことがあるものだ。

マンガや映画やドラマってそういう偶然を取り上げるから、「いやいやないない」とツッコミを入れてしまいたくなるけれど、私たちの生活はやはりちょっとした出会いが動かしているのかもしれない。

ちなみにこの作品のもうひとつのおもしろさは登場人物の女の子が「若林さん」なところだ。最初はつい「前編の大学生若林さんの、高校時代の話か?」と思っていたら、別の人と結婚するオチなので、それぞれの「若林さん」がいることに気がついた。

作者の音井れこ丸氏の作品に「若林くんが寝かせてくれない」というのがあるが、この若林くんというのは学校の生徒なので女性のことだ。もしかしたら登場人物のヒロイン、全部若林なのかもしれない。

なんかそういうのも楽しいよね。

本書、オススメである。

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