心地よい夢の世界で彼女は料理をする~「さめない街の喫茶店」 – 8th FEB.

心地よい夢の世界で彼女は料理をする~「さめない街の喫茶店」

このコミックレビュー枠は、「ちはやふるを2~3巻くらいでプッシュする」というのが理想だが(つまりこれから大きく育つ若い苗を紹介したい)、数巻で完結した佳作も紹介したいもののひとつだ。

このマンガ、2冊で完結してしまったのだが、味わい深いので好きな方には一気読みとしての購入をオススメしてみたい。

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そこは夢の世界の街ルテティア。不思議な喫茶店に居候して、お菓子や軽食を毎話作って、街の住民と食べる。魔女だという小さな姉妹。古本屋の若主人。同年代の女友達など様々な登場人物がみなおいしそうに食べていく。

簡単なレシピと作り方が紹介されるので、だいたい40種類くらいのメニューが登場する。どれもうまそうだ。……といってもただのお菓子レシピマンガ、というわけではない。

主人公の女の子が、ここが自分の夢の街であることをぼんやりと、そして徐々に自覚していく中で、元の世界に戻るまでがこのマンガのもうひとつのストーリーとなっている。

居心地の良い夢の世界から醒めないで欲しいと願う主人公が、どうやってその世界から抜け出すかはしばしば描かれる題材だが、無理に引き剥がされるのではなく、2巻というちょうどいいバランスで戻ってこられるのは読者としては心地よい読後感だった。

なぜ、夢の世界に彼女がこもってしまったのか、夢の世界はどうしてできているのかは、読んでみてのお楽しみとしたい(舞台が夢の世界であるというのは冒頭で示唆され、ネタバレというほどではないのでご安心を)。

ストーリーがぐるっと一周してきて最後に現実の世界とルテティアが「繋がる」描写があって、そこはぐっときた。そしてそれは前向きに今を生きるというというメッセージでもある。

ところで、表紙写真を見ていただければ分かると思うが、主人公の目が「縦線一本」で描かれている。マンガというかイラスト風なタッチだ。個人的にはこのタイプの描写が大好きで、密かにコレクションがある。

しかし主流の絵柄というわけではないので、そう冊数があるわけではないこのコミックを発見したのは書店の店頭でたまたま、という出会いだった。コミック探しはこれだからやめられない。

実は2巻の発売を気がつくのに少し時間がかかってしまった。ふわっとしたファンタジーにはこれくらいの線描がちょうどいいと思うので、ぜひ作者さんにはまた違う世界で作品を著していただきたいと思う。

ぜひこの世界に触れていただければ。2冊一気読みをオススメです。


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