作品の結末は電子書籍で読む時代~「アイとアイザワ」を読む – 8th FEB.

作品の結末は電子書籍で読む時代~「アイとアイザワ」を読む

1巻を購入して「続刊出たら買おうかな」と思っていたらなかなか発売の報が届かない。まあ、じきに出るだろうと思っていて忘れていたものが、実は打ち切り、あるいは続刊の発売がNGとなっていることがある。

ところが、作家の強い意志があったり周囲のサポートに恵まれると、「完結はKindleで」ということがあったりする。今回はそんなコミックを一冊紹介してみたい。

テーマはAIとの恋愛、ということになろうか。すべての情報を忘れることができない人間の女子高生と、シンギュラリティを超えてしまったAI男子(AIに男子というのもおかしな話だが)が、世界の危機と立ち向かうのが基本的なストリーだ。

1巻がなかなか印象的で、2巻も買いだなあと思っていたのだが、先日Kindle Unlimittedに2巻がアップされていることに気がついた。Kindle Unlimittedは「買うほどじゃないが、読みたいマンガ」とか「昔持っていて書架から引っ張り出すには面倒なマンガ」をだらだら読みするのに向いていて、風呂で読むときなどに使っているのだが、まさかそこに2巻が顔を出すとは思わなかったのでびっくりした。

あわててAmazonで紙書籍を検索してみたが、どうも発売されていないようだ。というかKindleしか掲載されていない。リリース日は19年9月だ。

内容的には売れていないイメージがなかったので、もしかすると作家たちの希望として電子版オンリー(配信アプリも含む)として2巻をリリースしたのかもしれないが、とりあえず読まなくてはいかん。あわててダウンロードして読んだ。

2巻で完結させる場合、スピード感をもって一気に複線を回収しながら、提示漏れていた設定が明らかになり、エンディングに収束していくのが好きだ。「アイとアイザワ」は気持ちよく2冊マンガとしてのラストにたどり着き、読後感も良かった。

ネタバレはあまりしないことにするが、シンギュラリティを迎えたAIというテーマを日本のマンガ、しかもうめ(作画)さんの絵で見られるのは楽しかった。ハリウッドの映画ならとにかく世界の破滅に向けてドッカンドッカン爆発することになるし、たぶんマッチョなオッサンも登場するが、ここでは女子高生2人を中心に世界は緊迫度を高めていき、しかし世界には爆弾は落ちずにラストにたどりつける。そしていつもの日常が(ちょっと違う形で)戻ってくる。

内容のおもしろさにはまったく疑いないので(大長編や大作を希望ならそれには合致しないが)、ぜひ読んでみていただきたい。

ところで、完結くらいさせてあげられない紙媒体の世界の厳しさには世知辛さを感じるが商売としてはやむを得ないところだ。そこに「Kindle等で続刊が出てエンディングが見られる」というのは作家とファンにとってはとてもいいことだ。

小学生のみずみずしい日常を描いているフルカラーコミック「ぼくらのじかん。」という作品があって、なかなか2巻が出ないと思っていたら、発売のチャンスがなかったようでKindleで続刊が出ていた。こちらはUnlimittedにはなっていないので電子書籍として購入をすることにした。

(どうでもいい話題だが、AmazonはポイントをKindle購入に優先的に消費するのをやめてほしいところだ。電子書籍は経費にするので実費で買いたいし、ポイントは物販に使いたいのに…)

ちょっと前なら、同人誌として最終刊を自腹で出版する選択肢があった。いくつかの作品で秋葉原の同人ショップで完結までの続刊を買ったことがある。しかし、印刷コストの負担や在庫のリスクを抱えると紙で個人が発刊するのは難しい決断だった。しかし電子書籍なら公開までは簡単に踏み切れ、マネタイズもしやすい。

作家さんには「自分の納得するところまでは書きたい」と思うのなら(書き終えるまでの生活コストの問題はあれど)、「最終刊はKindleで」をやっていただきたい。

最後の課題は「Kindleで出てますよ」をどう情報としてキャッチするか、だ。作家さんのSNSをまめにウォッチしていればいいのだが、保有しているマンガの作家を全部フォローするわけにもいかないし。私のためのコミックおすすめコンシェルジュがほしいところだ。

その任はもちろん、AIにやってもらうことにしよう。


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