サブカル女子の恋、どこへ向かうか~「アレンとドラン」 麻生みことといえば、「そこをなんとか」という弁護士マンガが最近は大きくヒットした。一方で「路地恋唄」のようなしっとりとした恋愛ものもうまく書く、今まさに旬の作家のひとりだろう。 でも個人的には小品のようなこちらがぼくは好きだ。ということで「アレンとドラン」をレビューしてみたい。 View this post on Instagram A post shared by Syunsuke Yamasaki (@yam_syun) このラインより上のエリアが無料で表示されます。 主人公は映画マニアなサブカル女子、ショートの髪型、メガネ娘というのはオシャレというよりは、化粧やヘアケアの時間を削りたいから、という感じ。そんなことより、ミニシアターの映画を見るほうにお金をかけたいと思っている。 大学生活もゼミでも割と地味目のキャラを演じつつ、映画鑑賞ライフを楽しんでいた彼女。自分には恋愛なんか関係ないと思っていたら、なぜかアパートの隣室に住む超絶美男子との縁が。しかしこの男子は、いつも彼女がいてはすぐ違う彼女にチェンジしている。といっても浮気性のプレイボーイというわけではない。他人の心理を観察するのが大好きなちょっとクセのある人物だったものだから、恋愛が長続きしないのだ。 何せ、彼女の元カレがやってきて修羅場になったはずが、元カレの好きな思いを分析しつつ、君の気持ちはわかるよ、なんて同意しちゃったりする。もちろん彼女は驚いて別れてしまうことになる。 主人公の女の子もある意味、彼に観察されている対象でもあるのだが、好きな気持ちを隠しつつ友人として振る舞おうとする。確かに今の彼と普通につきあっても、すぐに別れることになるのは目に見えているし、友人として興味を持ってもらえるほうがいいのかもしれない。さて彼女と彼の関係はどうなるか。 ――いやはや、こういう風にあらすじを書くと、まったくこのマンガの面白みが伝わらない。上記のあらすじは忘れていただきたいくらいだ。 ここまで長々と書いたあらすじを抜きにして面白さはちゃんと成立しているのがこのマンガと作者の面白さ、すごさだと思う。むしろあらすじには書きたくない部分、二人の関係性だったりちょっとしたエピソードのほうにこのマンガの面白みがあるからだ。 そしてもうひとつ、「サブカル女子を応援してしまう気持ち」でつい読んでしまう。彼女は映画オタクだからサブカル女子、なんていうけど、要するにオタク女子なのだ。自分のことには不器用で、好きなものにのめり込んだらいくらでものめり込めるような主人公はほっておけない感じがする。 もちろん主人公の女の子はとてもいい子なので読者としては応援しながら読んでしまう。あ、もちろん、ぼくがメガネっ娘は大好きということもありますが。あと自分がオタクFPということもある。 主人公や登場人物に対する感情移入は、作品愛をどこまで深めるかのひとつの大きなカギだ。感情移入をせずに、舞台や背景や群像を眺めていく楽しみもあるけれど、やはりマンガは誰かに感情移入をしたい。 というわけでこの「アレン・ドラン」をオススメするわけだが、実はちょっとした悩みもあったりする。 心配なのは彼女の行く先だ。趣味として割り切っていたはずの映画についてブログを開設し「アウトプット」する側や、できれば業界の側に携わりたいと彼女は考え始めている。その夢はかなうのか裏切られるのか、あるいはその展開は読者的に納得できるものになるのか、実はここが今後の流れに左右する大事なところに来ているのだ。 もちろん作者の力量であればストーリーとしてこれをクリアすることはできると踏んでいるものの、ひとりのキャラに感情移入した読者としてどう受け入れることができるかは未知数だ。なぜなら「キャラ」に思い入れをしてしまうと、「話」としては納得できても、応援していたキャラの未来が納得できないことがあるからだ。 ま、それはそれで、「アレンとドラン」に自分が感情移入するほど楽しんでいるという証でもある。美形の彼と、サブカル女子、ふたりの関係、気になった方にはオススメです。 試し読み https://kisscomic.com/c/allentodolan.htmlAmazon紙書籍購入 https://□ama□/2QlfQFRKindle版電子書籍購入 https://□ama□/35JY8SBヤマサキさんのコミック蔵書リスト https://booklog.jp/users/yamsyun 関連 投稿ナビゲーション 行田市発の埼玉マンガはやっぱりおかしい~「埼玉の女子高生ってどう思いますか?」ゾンビものはとうとうフランス革命にまで達す~「ベルサイユオブザデッド」