戦前戦後の東京はなぜ蠱惑的なのか~「極東事変」 – 8th FEB.

戦前戦後の東京はなぜ蠱惑的なのか~「極東事変」

第一巻というのはなかなか難しい。好きな話でも、展開し続けられるかは未知数だ。でも第一巻はできるだけ手を出すことにしている。

今回の「極東事変」もそんな一冊。終戦すぐの東京に戻ってきた復員兵の主人公。トラブルに巻き込まれ、ひょんなことからGHQの特務機関で働くことになる。

※コミックウォーカーより

終戦を認めず、731舞台が作り出した変異体(ヴァリアント)が暗躍しており、それにGHQの元でそれに対峙するのも変異体(ヴァリアント)の子だった。そして主人公も衛生兵と名乗るには「なぜか」あらゆる武器に通じているのであった。

戦後の東京についての書籍はいくつか手にしたことがあるが、なかなかすごいエピソードが多い。「生きる」ことは抜きにできない社会と、「止まった」政府とのはざまで闇市が成立し、また復興が進む中で解消されていくことになるプロセスにはアンダーグラウンドな話題がたくさん隠れている。

私は飯田橋にオフィスをかまえているが、JRのホームから見える古いビルは、闇市の出店者がうまく共同して作ったビルなのだという。今ではラーメン屋と激安の居酒屋が並んでいるが、闇市を整理するという流れに乗り、うまく用地確保をした当時の人たちのエネルギーを思うと不思議な感慨がわいてくる。

マンガの中でも当時の雰囲気はできるだけ丹念に描いている、まだ泥だらけの道路、ほとんど焼け野原にバラックで家を確保する人たち、そして我が物顔でいるGHQの顔……。

個人的には少年マンガ的な熱のある絵柄が気に入った。東京を舞台にしたドラマはこういう粗い絵柄がよく似合う。

一巻はまだ話が滑り出した段階なので、ここで青田買いを他人に薦めてもいいかは難しいところだ。よくあるといえばよくある話だし、ここから冒険活劇として盛り上がっていけるかは作者の成長と編集者の力量にかかっている。

しかし、掲載誌は「乙嫁語り」「ダンジョン飯」などのヒット作品を連ねるハルタ。この冒険譚を5巻以上引っ張って、楽しく盛り上げてくれるのではないか、と期待している。

試し読みをして、舞台にピンとこない人には無理にオススメはしない。しかし、好きな人にはぜひコミックを手にしていただきたいところだ。


試し読み https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_EB06201162010000_68/
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