萌えは媚びではない センスある萌え四コマ~「Aチャンネル」を読む~ – 8th FEB.

萌えは媚びではない センスある萌え四コマ~「Aチャンネル」を読む~

「Aチャンネル」というマンガがある。一度はアニメ化もされているし、最新刊で10巻の大台に達したので、その名を知る人は多いと思う。

このコラムは基本的に1巻か2巻で活きのいい作品を取り上げることにしているが、今回はあえて10巻に到達した作品を紹介してみたい。

この類いのマンガは「萌え系」とくくられている。実際、出版元である芳文社は萌え系でこの10年くらいは稼ぎまくっている出版社のひとつだ。しかし、萌え系にもいろいろあって、ただひたすらに萌えるシチュエーションを並べていくだけの作品と、作者の美意識というかセンスのようなものが基盤にあって、そのうえで繰り出す世界観が萌えるタイプのものとがある。

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実際、何巻も発刊されるものは、四コマでもそれなりのストーリーが展開されていくし、作者のこだわりがうまくコミックに落とし込まれているように思う。

京都アニメーションの巧みなアニメ化で一世を風靡した「けいおん!」も、マンガ単体で読み返して面白さには疑いがない。

「Aチャンネル」もそんな作品のひとつで、今でもときどき1巻から読み返してしまうほど好きなマンガのひとつだ。背の低い女の子が主人公で、一学年上の3人組女子と同級生との関係が描かれているが、そんな説明はあまり意味がない。それ以上に絵のセンスや描かれるネタのバランスがよく、ついつい読ませる。いっそ永遠に続いていけばいいのにと思ったりもする。

ところが、心地よい展開も終わりに近づいていることを10巻にして気がつかされた。主人公は2年生になり、一学年上の3人組は受験生になった。そこで、なぜか季節はぐんぐん動き出し、一冊読み終える頃にはクリスマスになってしまったのだ。

さらに大学の進学先はそれぞれ違うような展開が示唆され、「終わり」が来ることが明らかになってきた。

これだけ各キャラの性格が深掘りされ、また各キャラと主人公の距離が縮まってもきた展開を楽しみながら、その先の「終わり」が見え始めてしまったというのはちょっと切ない。

もちろん、先輩キャラがいなくなってからの3年生編があってもいいのだけれど、たぶんそれは「Aチャンネル」らしくないとも思う。

終わりはやはり、きれいに迎えてほしいなあと読者としては思う。それがもし商業ベースで許されるなら、作者が望んだ形で終わって欲しい。ファンとしても無理やりの最終回でないほうがいいに決まっている。

たぶん、この作品は読者にも編集者にも愛されている(ように感じられる)。あと何巻あるか分からないが(もしかしたら次が最終かも?)、来年あるかもしれないその瞬間を楽しみに待ちたいと思う。

まさか萌え系四コママンガを読みながらしんみりするとは思わなかったが、それもマンガを読む楽しみのひとつだ。次巻は本レビューで取り上げないつもりだが(自分内ルールで同じ作品は紹介は一度のみとしている)、そのときもまた楽しみたいと思う。

試し読み(コミックシーモアのサイトより) https://www.cmoa.jp/bib/speedreader/speed.html?cid=0000089954_jp_0010&u0=1&u1=0&rurl=https%3A%2F%2Fwww.cmoa.jp%2Ftitle%2F89954%2F
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