絵描きは美しい絵を描くことだけに集中した成果がここに~「化物語」を読む – 8th FEB.

絵描きは美しい絵を描くことだけに集中した成果がここに~「化物語」を読む

さて、未読の人は下記リンクから少年マガジンのサイトに移動し、第1話の試し読みをしていただきたい。できればパソコンの大きな画面で、タブレットなら横向きにしてみていただくと、見開きのダイナミックさも分かると思う。カラーページも再現されている。

「化物語」はライトノベルやアニメファンなら誰でも知っている作品のひとつだ。西尾維新の描く怪異譚だ。小説のほうはもう何冊シリーズが続いているか分からないくらいだし、アニメも小説を続々ビジュアル化し好評を博している。特に画面に活字をドンと置くような演出、シルエットを活用した演出などは、当時衝撃的だった。

今回紹介するのは「化物語」のコミカライズだ。マンガならではの読みやすさ(小説やアニメを見る時間的拘束と比べて、読む時間は短いのがマンガのメリットだろう)を活かしつつ、化物語の世界観は損なわれていない。それどころかマンガならではの魅力もしっかり追加されている。今まで小説もアニメも未読の人にはぜひオススメをしたいと思う。

コミカライズを担当しているのは大暮維人。いくつかの人気マンガを生み出しているが、その絵の美しさには定評があった。むしろ絵の圧倒的な美しさと比べるとストーリーテリングについては好みが分かれる作家だったかもしれない。

漫画家は全ての世界を自分で生み出す「話も絵も自分で考えて描く」タイプが主流だったが、「絵を描くことだけに集中する」漫画家、つまり原作をもらって描く漫画家も増えている。「ヒカルの碁」や「デスノート」、「約束のネバーランド」などは美麗な絵を描き出すことに漫画家の能力は集中させ、ストーリーは徹底的にストーリーテラーに委ねている分業が成功している例だろう。

試し読みで紹介されている第1話だけでもおわかりいただけるだろうが、これを「ネタづくり」と「絵作り」の両方をひとりでやっていたら、さすがに無理があると思うほど美麗なマンガとなっている。コマ割りの大胆さ、コマごとに描かれる構図の見事さ、小道具までの書き込みの良さ(例えば文房具が戦場ヶ原の足元に落ちたときの並び具合!)など、作家の絵を描く能力を徹底的に使い尽くした、という感じがする。

新刊は先日7巻が発売されたが、刊行ペースもなかなか速い。それでもまったく絵の熱量が落ちていないのは、ストーリーを楽しみながらどうビジュアル化するか徹底的に考えるだけのリソースが漫画家にあるからだと思う。

ひとつずつ原作の怪異がマンガの世界で再構成されて表現されていくのが読んでいて楽しい。原作とアニメは本数が多すぎて途中で断念した私のような読者も、もう一度最初から化物語の世界を楽しむことができる。もちろん新入りも。

しかし、大暮維人の絵は見事だ。カラーも美しいが、むしろモノクロで描くページのほうにすごみがあるように思う。未読の人にも小説やアニメを既読の人にも、ぜひオススメしたい。

試し読み https://pocket.shonenmagazine.com/episode/10834108156629369525
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