百合短編集はざっくりとしたエンディングが楽しい~「包帯少女期間」 須藤佑美という漫画家を注目している。「ミッドナイトブルー」という短編集(2016)と「みやこ美人夜話」という連作短編(2018)の2冊を出していて、絵柄となんとも言えない空気の描き方が気に入っていた。 新作はなんと百合レーベルからの短編集発売ということで、読んでみた。これがやっぱり良かったので今回取り上げてみたい。 View this post on Instagram A post shared by Syunsuke Yamasaki (@yam_syun) このラインより上のエリアが無料で表示されます。 百合、つまり女子×女子のストーリーについてはどこを描くかはひとつのテーマだろう。ふたりの関係がはっきりと成立するまでの直前は背徳感だったり、美しさだったり、探り合いだったり、ふたりの関係性が良く出るが、本書も7つのシチュエーションでおおむね「関係成立まで」を描いている。 今まで仲が良かったわけでもない田舎の高校の同級生、すでに距離が離れてしまった友人に忘れられる高校生、高校の先生と卒業したての大学生、大学の先輩後輩、などシチュエーションは様々で、それぞれほわほわした恋愛模様というか、ヒリヒリするような関係性の衝突や探り合いのほうにページが割かれている。 かといって読みづらいというわけではなく、ページをめくる手がどんどん早くなりつつ、いやもっとゆっくり読まないともったいないよと頭のどこかでは自分に語りかける声がする。 そういうのって短編集を読むときの楽しみのように思う。だって数十ページを読めば、お話しがひとつ終わってしまうことが確定しているのだから。これは連載もののマンガを読むのとは違う、短編集ならではの愉楽だ。特に短編の場合、終わり方をザックリと切って締めるやり方があるが、うまく決まると読者的には堪らない。 今回のだと「お願い」という短編が、最初のページと最後のページがループする仕掛けになっていてぞくぞくした。もちろん、短編読んで良かった!というタイプの感触だ。 また短編集の性格上「大当たり」と「並み」は必ず出る。でもそれは個人の好みかもしれない、と考えると実は「大当たり」を人に勧めることは自分の内情をさらけ出すことでもある。 個人的には最後の3編が内容は異なるのだが、並びがよくて好みが続いたので読後感がとても良かった。あなたはどうだろうか。 短編集は作家の無名であっても薦めやすいので、できれば多くの人が読んでもらえるとうれしいなと思う。本当ならそろそろ2冊以上に及ぶストーリーものの作品を読みたいところなのだが、できればこのまま短編集を延々と書いていただいてもいいなあと思ったりする。 まだ若い作家の才気が1話ごとにほとばしり、それを1話ごとにぎゅっととじ込められるのは短編集のうちなので、ぜひ一読をオススメをしたい。 試し読み(コミックシーモアのサイト) https://www.cmoa.jp/bib/speedreader/speed.html?cid=0000181188_jp_0001&u0=1&u1=0&rurl=https%3A%2F%2Fwww.cmoa.jp%2Ftitle%2F181188%2FAmazon紙書籍購入 https://□ama□/2nHKQFDKindle版電子書籍購入 https://□ama□/33sRezH 関連 投稿ナビゲーション ファンタジーの異種族がみんな違う言葉を話していたとしたら!「ヘテロゲニアリンギスティコ~異種族言語学入門~」絵描きは美しい絵を描くことだけに集中した成果がここに~「化物語」を読む