ファンタジーの異種族がみんな違う言葉を話していたとしたら!「ヘテロゲニアリンギスティコ~異種族言語学入門~」 ワーウルフ、リザードマン、ミノタウロスにハーピーといったファンタジー世界の異種族だって倒されるためだけの敵ではない。彼らは彼らなりに生活がある生き物である。おそらく言語があって、コミュニケーションを取っているに違いない。 View this post on Instagram A post shared by Syunsuke Yamasaki (@yam_syun) しかしそれが人間の言葉と同じであるとは限らない。生活に必要な語彙はそれぞれ違うし、体の発声機関も異なっているからだ。 もちろんそんなことをマジメに考えている小説やアニメはほとんどない。ホビットやドワーフ、エルフは基本的に人間と同じ「口」を持っていて会話も人間と同じ言語で話す(日本語と英語のように異種族で言語が異なることはあるが)。 今回紹介するマンガ「ヘテロゲニア リンギスティコ」はまさかの「異種族の異言語マンガ」である。 例えば鳥の種族であるハーピーは身振りを用いた言語を扱う。足踏みやうなり声が言語的意味合いを持つ種族もある。 といっても異種族間で没交渉ではないので、リザードマンとワーウルフが会話をする場合、どちらかの言葉を使って(どちらかは不慣れな言葉で)コミュニケーションを図ったりする。 このマンガでは、主人公(人間)の若手言語学者が異種族がたくさんいる世界に旅し、言語体系やコミュニケーション手法を分析したり、そこで自分も行動してみたりする話だ。 主人公は最初、指導を仰いでいた教授の代理としてワーウルフの集落に飛び込む。少しは勉強してきたつもりであっても、分からない言葉や風習に戸惑い、しかし好奇心をみせる。 例えば2巻のネタだと「食べる↑」というイントネーションと「食べる↓」というイントネーションで言葉の意味合いが異なる種族の会話に気がついて、解析を試みたりしている。別のところでは振動で会話する蛇の種族が現れたりする。 異種族間の会話についてフォントを変えたり、縦書きと横書きを交えたり、時々ノイズが混じる表記にしたりするのもなかなかおもしろい。吹き出しに、 「私■親は 行き止まりと ここに残■」 と書かれていたりするのだが、「たぶん『私の親は行き止まりだからとここに残った』という意味でリザードマンは話しているのだろうか」などとこちらも言葉の解釈に参加してしまうようになったりする。 さて、ここまで面白さをアピールしても、ほとんどの読者にとっては「え、それがなんでおもしろいの?」としか思えないのではないか。正直いえば、このマンガの世界観はあまり類例がないのでレビューも難しい。 オススメなのは間違いなのので、試し読み部分だけでいいので、一度読んでみてほしいところだ。試し読みをする価値は大いにあると思う。 オフィシャル試し読み https://web-ace.jp/youngaceup/contents/1000086/episode/Amazon紙書籍購入 https://□ama□/358i2qAKindle版電子書籍購入 https://□ama□/2AIUR8t 関連 投稿ナビゲーション SFマンガをあえて紙で読み、その終わりの近いことを楽しむ~「ロボサピエンス前史」百合短編集はざっくりとしたエンディングが楽しい~「包帯少女期間」