SFマンガをあえて紙で読み、その終わりの近いことを楽しむ~「ロボサピエンス前史」 – 8th FEB.

SFマンガをあえて紙で読み、その終わりの近いことを楽しむ~「ロボサピエンス前史」

とりあえず下記リンクから、講談社オフィシャルの試し読みをしていただきたい。これが好きだと思う人はもう迷わず注文したほうがいい。

試し読み https://morning.kodansha.co.jp/c/robosapienszenshi

このラインより上のエリアが無料で表示されます。

おそらくこの本を手にするチャンスはあまりないはずだ。大型書店のコミック売り場が広いところでないと、大部数発売されていないこの種のマンガは平積みでなかなか並ばない。発売から一月を経過しており、担当者がマンガ読みで推している場合でなければ、一瞬平積みされていてももう棚にしまわれてしまっているだろう。

このマンガは人間と同等かそれ以上の知識を持ち始めたロボットたち(今の流行り言葉でいえばAIか)の生きる姿を書いたSFマンガだ。試し読みで楽しめる世界は、2話目ではまた別の世界に変わり、しばらくは連作短編集としてSFの世界を堪能できる。

途中で出てくるロボたちは、人間では観測不能な時間軸をもって太陽系外の観測任務に出かけたり、地下で暮らして半減期を迎えるまでのあいだ数万年のスパンで放射性物質の管理人を務める役割を担っていたりする。人間ではなしえないこととは言え、人間と近い感情を持ち合わせつつある彼らにその役割を負わせるということの恐ろしさにぞくりとしたりもする。

そうして連作短編を楽しんでいたつもりになっていたら、上下巻の下巻になる頃から、最初の短編のキャラが再登場し始める。また時代が大きく動き始める。まさか人間の存在が……というくらいの時間軸で話は進み、そしてその展開が大きなうねりを描きながら、ラストへ収束していくことになる。

この手のダイナミックなストーリー展開は、「紙のボリューム感」があるとなおさら楽しいように思う。途中から大きな展開に気がついたとき、はっとする。「今自分が読んでいるコミックの半分以上が経過しているということは、ここから一気にエンディングに突き進むのか!」という楽しみが紙にはある。

そして「ああ、もうすぐストーリーとのつきあいが終わってしまうのか……」という一抹のさみしさとが楽しみと同居した感情を抱きつつページをめくる手はむしろ早くなっていく。こうした悦びは紙の書籍ならではだと思う。

SFを紙で読むというのはアナログ懐古のような気もするがそれでも作品世界をより深く濃く楽しめるならそれもいいじゃないかと思う。私は上下巻の2冊を楽しく読み終えることができた。

ところで、著者について今まで私のアンテナには一度も引っかかってこなかったのも新鮮な驚きだった。これでも秋葉原の書店は品揃えの好みの異なる3店を巡回しているのだが(たとえばこういうマニアックなSF作品などはComicZINが比較的品揃えが強い)、彼の存在を知る機会が今までなかった。

作品を描く彼の能力は確かで、過去の作品リストを検索してみても機会があればまとめて読みたいと思わせる。しかし、そういう作家にここで会うきっかけがあった、というのがおもしろくもある。

もしかしたら、前作で手にしていたら評価を高くできず、今作を読むことがなかったかもしれない。もちろん前作を読んでいないからそれは分からないけれど、作家との出会いには不思議なタイミングがあるものだ。

「ロボ・サピエンス前史」オススメです。

試し読み https://morning.kodansha.co.jp/c/robosapienszenshi
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