不眠症の高校生男女は天文部で過ごす~「君は放課後インソムニア」を読む~ 次のコミックが出たとき、買ってできるだけ早く読みたいと切望するだけではなく、「心持ちが落ち着いているときに気持ちよく読みたい」と思わせる作品というのはなかなかない。オジロマコトさんのマンガを一言で言うとそんな作品である。 View this post on Instagram A post shared by Syunsuke Yamasaki (@yam_syun) このラインより上のエリアが無料で表示されます。 「富士山さんは思春期」ではクラス1背の高い女子との身長差大な青春恋愛模様を描いて注目された。周囲には交際を隠している中学生なんて初々しすぎるシチュエーションを田舎の日常生活として不思議に淡々と描いて、それがきれいな話に納まっていた。 次の作品「猫のお寺の知恩さん」は、実家のお寺を継ごうと考える親戚のお姉ちゃんと事情があって田舎の親戚の寺に住むことになった高校生男子のほのかな恋愛を、これまた淡々と描き続けた。クラスメイトの人間関係も少々関わるものの、これもベタベタな恋愛マンガには陥らず、田舎の高校生の日常を描き続けたのがおもしろい作品だった。 新作「君は放課後インソムニア」が発売されていたので取り寄せて読んでみたので紹介をしてみたい。 舞台は地方の高校。主人公はそれぞれの事情で不眠症に悩んでいる高校生の男女ふたり。ふたりはそれぞれがたまたま廃部になった天文部室をみつける。 そしてそこでいつになく気持ちよくうとうとする時間を共にし、ちょっとした仲間意識を持つところからストーリーが始まる。眠れないふたりは天文部室にちょっとした安らぎを見いだしたのだ。 今のところ不眠症の原因は明らかになっていない。高校生には悩みはいくつもあるし、それは些細なものであっても精神のバランスを崩すこともある。もともと原因が見いだしにくい病気でもあろう。あるいは、まだストーリーの中で理由が描かれていないだけかもしれない。 眠れぬ夜中にふたりで散歩をするエピソードがあるが、ひとりで過ごす不眠の夜なら、ふたりで過ごしたほうがずっといい。しかし地方の高校生だけに、深夜の散歩はなかなkスリリングだ。 ところが、学校にも友人にも内緒でこそこそ使っていた天文部室だったが、一巻の後半で不正使用がバレ、天文部員として使わせてもらうことになった。どこまで本気で空を眺めることになるのかは2巻以降のお楽しみ。 昼間は不眠症に悩むふたりにとって天文観察はいいアイデアのように思う。どうせ眠れないなら、夜空を眺めていたほうがずっといい。天文観察は少人数だから余計な人間関係を煩わしく思うこともない。 一方で、天文観察に夢中になって新星を発見するようなことは考えにくいので(作風としても現実としても)、ここから先のふたりと天文部がどうなるのか興味がある。今まで淡々と普通の日常生活や人間関係を描いてきた作者さんがまた淡々と描くであろう新しい世界が楽しみだ。 今どきこんな日常を淡々と描き続けて連載を続けさせてもらえる作家も珍しい。オジロマコトという漫画家さんはたぶん編集者に愛されているのだろう。もちろん読者にも。 私もそんな読者のひとり。本作品オススメです。 試し読み https://comics.shogakukan.co.jp/book?isbn=9784098603954Amazonで書籍購入 https://□ama□/350Woo2Kindleで電子書籍購入 https://□ama□/30hcXNK 関連 投稿ナビゲーション Uターン静岡ガールだって人生は楽しいはずだ~「ローカル女子の遠吠え」SFマンガをあえて紙で読み、その終わりの近いことを楽しむ~「ロボサピエンス前史」