「一級建築士矩子の設計思考」~建築士目線で見る、まちとまちあるき – 8th FEB.

「一級建築士矩子の設計思考」~建築士目線で見る、まちとまちあるき

個人オフィスとして建築設計事務所を開業した女性。酒好きが講じてか、バーの店跡をそのまま建築事務所としてオープンしてしまう(コスト削減でもある)。ここまでいうと「あー、女の子を主人公とした、いろんな仕事のマンガねー」という感じだが、そこはひと味違う一冊。

まちあるきや建物をネタにしたマンガはいくつかあるが、建築士目線というのはおもしろい。まず「構造」を考えている。マンガの中だと強度不足の恐れがある設計図面で一戸建てについて語る話がある。おもしろい。

「法律」もある。周辺住民への説明をサボっているディベロッパーが登場する話があって、格好だけ説明をした風にしている業者があれば、とりあえず反対のアクションを取る偽物住民が出てきたりする。おもしろい。

また「都市計画」もある。特におもしろかったのは主人公がオフの日にクラフトビールのお店をはしごするエピソードだ。「計画道路」というテーマで地図を書いて、位置関係を説明する。たとえばこんな感じで。

計画道路補助116号線、という人は誰もいない。明治通りと看板にも書いてある。しかしほとんどの道路は計画的に図面に引かれそれが用地買収や移転を重ねて実現していくものだ。

計画道路をたどりつつ散歩する、というのはなかなかおもしろいまちあるきだ。以前、「江戸時代からある古道だけたどって神楽坂を一周する」というまちあるきを企画してもらったことがあったが、計画道路しばり、おもしろいかもしれない。

ところで、この作家さんは、かつては男性向け18禁マンガを大ヒットされていた作家さんである。ペンネームも買えずに一般向けのマンガにチャレンジしたことにまずは敬意を表したい。

当時はとんでもない売り上げをあげたらしいので、おそらくはすごい金額を手にしたはずだ。そういう人が10年以上経ってから、普通のマンガで(おそらく当時と同じ売り上げは期待できない)チャレンジをしたというのもまたすごい。

当時のマンガでは、男性の描写が下手で、これはわざとなのか、単純に書けないのかが不思議だったのだが、今回の一冊では男性が普通に描かれていて興味深かった。

しかし、この作家さん、実は自分自身が一級建築士の資格をお持ちだったとは。びっくりです。

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