やさしいファンタジーが読みたい、そんなあなたにこの一冊~「エルフと狩猟士のアイテム工房」 – 8th FEB.

やさしいファンタジーが読みたい、そんなあなたにこの一冊~「エルフと狩猟士のアイテム工房」

近頃、異世界転生ものがあまりにも多い。そしてテレビゲームのRPGの文法を当然のように使っていて「ステータス画面」が出てくる。「転スラ」あたりではそれも新しいアイデアだったのだろうが(転スラはおもしろい)、最近はイージーな亜流が多すぎる。

普通に、ごく普通のファンタジー世界のコミックが読みたいと思うことがある。しかしそう思ってみるとなかなか選択肢がなかったりする。今はそれくらい、転生ファンタジーがあふれているのだ。

その点では以前紹介した「葬送のフリーレン」はゲームの文法を逆手に取りつつ、しっかりしたファンタジーコミックとして展開しているのが素晴らしい。

そして今回紹介する「エルフと狩猟士のアイテム工房」も「アイテム作成」というアイデアはもらいつつ、ファンタジーコミックとして展開しているので紹介してみたい。

主人公となるのは、エルフの女の子。彼女は調剤に詳しく、いろんな材料を組み合わせて薬を作る。魔法の素材の組み合わせ方について、二次方程式のような計算式を書いていくのがおもしろい。

そして子どもの頃、縁があって彼女に命を助けられた人間の青年がやってくる。彼は共に過ごし、彼女の材料集めの手伝いをする、というのが基本的な構図だ。

クライマックスでは、彼の戦闘能力の高さが、彼自身の鍛錬以上のところにも理由があることが明かされ、自分の過去と呪いに向かい合うことになる。そして、彼女は彼との関係に向き合うことになる。

――難しくいうとそういうことだが、実際のマンガはファンタジー世界の日常を描きつつ、生活の悩みをファンタジー的に魔法的なやり方で解決するという日常のファンタジーだ。最後のクライマックスシーンを除けば、鬱展開もない(もちろん鬱展開はハッピーエンドに昇華される)。

長寿のエルフの主人公は背が低く子どもっぽく、サブ主人公である青年男子と凸凹コンピなのも、シンプルな展開で安心して読める。

この前友人と雑談していて、「複雑な設定は重くて読むのがしんどい。ゲームのマネをした設定はもう飽きた。ただ、のんびりとした、普通のファンタジーコミックを読みたい」という話になった。まったくその通りだと応じた記憶があるが、本作なんかはまさに「普通のファンタジーコミック」だ。

ちなみに本作品、アプリを使えば紙のコミックを買わなくても最後まで読み通すことができるのもうれしい。1巻を書店でみつけるのは難しくても読み進められるし、ちゃんと著作者にお金は落ちる正規の読み方だから安心だ。

一日一話、のんびりファンタジーの世界に浸かりながら、最後まで読み通してみてはいかがだろうか。オススメです。