創作は恥ずかしさをさらけ出すことだ!高校演劇部を舞台にした初々しさの物語~「まくむすび」を読む~ – 8th FEB.

創作は恥ずかしさをさらけ出すことだ!高校演劇部を舞台にした初々しさの物語~「まくむすび」を読む~

いきなりですが「耳をすませば」というジブリ作品があります。みなさんはどこに感動したか分かりませんが、私が一番ぐっときたのは、初めての小説を夢中になって書き上げるまでのプロセス(親に怒られたり生活がぐちゃぐちゃになったりする)と、書き上げた作品を地球屋のおじいさんに見せたあと、自分の作品の未熟さを泣きながら語るシーンです。

個人的には、あのシーンがよく分かります。私の中では「耳をすませば」はあそこでクライマックスが来ていると思うくらい。実は私、割と本気で村上春樹の後がまを狙っていた時期があるんですよね。大学の頃、授業をサボって何本か小説を書いて、サークルで読んでもらったり同人誌をデザインして印刷したりしたのです。コミケにもオリジナルの創作で何度か参加しているくらい。

応募した小説はモノにならなかったし、あの頃の書いていた枚数なんて、今からすれば微々たるものなのだけれど、それは今の自分へのステップアップの小さな一歩だったし、今の自分につながっていることは間違いないと思います。。

さて、話は盛大にズレてしまいましたが(笑)、本作「まくむすび」のブックレビューです。

「まくむすび」の主人公は下手ながらマンガを書き続けてきた女の子。高校入学を機に変わろう(それは周囲に合わせたふつーの女の子になろう、という意味)としていたところ、ひょんなことから創作劇を目指す演劇部に入部することになり、また創作と向き合い始めるお話。

創作というのは作っているときはとても楽しいものです。全能感すら味わえます。芥川龍之介の短編には「戯作三昧」というものがあって創作の境地に入り込んだ馬琴(もちろん書いているのは南総里見八犬伝)を描いていますが、ぐーっと作品世界に入り込むと周囲の音も聞こえなくなる瞬間があります。

しかし、馬琴ですら自分の作品の風評に悩まされるように(そして芥川もそうだったという)、主人公の女の子は友達の無邪気な感想に苦しめられます。それをどう乗り越えていくのか(友達との関係も含めて)、またさらに成長していくことができるのか、「まくむすび」の1巻は楽しみに読ませてもらいました。

実は、作者さんの前作「マヤさんの夜ふかし」というマンガが地味ながらおもしろく、注目していました。主人公とサブ主人公のふたりは、常にチャットしている(つまりリアルでは会わない)というシチュエーションマンガで、かつパソコンを使っているので、それぞれ基本的に自宅の部屋にしかいないというのに、読んでいて面白いものでした。

前作では「お、力を貯めてきている作家さんだな」、という感じがあったので、今作で爆発してくれるといいなあと期待しています。掲載誌は週刊ヤングジャンプらしいので、毎週怒濤のように駆け抜けていく日々だろうと思うけれど、ぜひここを大きなステップアップにしてほしいなあと思います。

「まくむすび」オススメします!


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