令和の時代に大正期の昭和天皇若かりし姿を振り返る面白さ!~「昭和天皇物語」を読む~ – 8th FEB.

令和の時代に大正期の昭和天皇若かりし姿を振り返る面白さ!~「昭和天皇物語」を読む~

令和の時代が始まって今、昭和を振り返るというのはよくある企画のように思うが、それが「月下の棋士」やら「哭きの竜」といったギャンブルマンガをものしてきた能條純一の絵になる、といえば話は違ってくる。
(いや、月下の棋士はプロ将棋を題材としているのでギャンブルというのは語弊があるか…)。

彼の絵柄は「白地」が印象に残る不思議なタッチだ。どこか静謐な絵柄で麻雀と将棋の世界の人間模様を描いてきた人が、昭和天皇の生涯を描くというのは面白いチャレンジだ。そしてそれは今のところ成功しているようだ。

幼少時の教育を取り巻く明治人の姿から始まった1巻は、皇太子妃選びの騒動を描き、最新刊の4巻に突入した。4巻では、青年となった裕仁皇太子が皇室初めての外遊をする姿を描いている。

皇族が初めて海外に渡るという一大事を日本はどう迎えたか、そして皇太子は第一次大戦が終わったばかりのヨーロッパの外遊から何を感じたかをみずみずしく描いている。

自由な生活を楽しむ感動のようなシーンがあったかと思えば(たとえば時間に囚われずスコットランドで釣りを楽しんだり、パリでお忍びで地下鉄に乗ったりする)、イギリス国王と私的な会談をして皇族としてのあり方に思い巡らし、また戦災地を巡っては戦争のむごたらしさに圧倒される姿が描かれる。

国内では大正天皇の体調が悪化する様を、難しいバランスで描きつつ、外遊から戻った皇太子が摂政となる準備が進む流れとなっている。

時の首相は原敬であり、彼が暗殺をされる直前のざわざわした空気も描かれている。彼を暗殺することになる若者の日常が描かれているのもゾクゾクする。そしてそれらが能條純一の絵柄なのだからたまらない。

下記のお試しでは第一話が少し閲覧できるが、話の始まりはマッカーサーと面会するところから始まる。本作品のひとつの着地点はそこまで描ききることだろう。

時代が大きくうねるこれからの数十年を、どこまで描いてくれるのかが楽しみな作品だ。オススメである。

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