「松風に憩う」~時代を動かす狂気に翻弄される人々 吉田松陰を描くという、驚きのマンガ、しかも「狂気」を全面に押し出しつつ明治維新前夜を描くというのはなかなかすごい。といっても「ここは今から倫理です。」の著者の新作と思えば得心。 吉田松陰というのはある意味「狂気を帯びた天才」というところがあって、その情熱は長州藩の俊英たちを惹き付け、明治維新に駆り立てていく。高杉晋作や久坂玄瑞のように亡くなった人もあれば、伊藤博文や山県有朋のように明治政府の中核を担っていく人もある。生き残った人のほうが狂気が薄いように思えるが、彼らが「近代日本政府」を形作っていくプロセスなどまさに狂気なしにはなしえなかったとも思う(長く生き残りすぎたがゆえに山県有朋は狂っていく感じもする)。 本作のもうひとつのおもしろさは、時系列に物事を追わないところだ。いくつかのイベントは、順番を前後しながら登場していく。遺骨を掘り起こすエピソードが登場すれば(つまり処刑されている後だ)、松下村塾でたくさんの長州藩士を教えるエピソードも出てくる。このシャッフルさもまた、心地よい(なんとなく、時系列でないため、頭が混乱するのもまた「狂」という感じがしていい)。 つくづく「吉田松陰の死」は日本を動かしたのだと思う。次巻は久坂玄瑞が出るようだが、期待大だ。 松かげに憩う 3 https://□ama□/3mbPvxe 関連 投稿ナビゲーション 「SLAM DUNK」~たった一試合。それだけで100億円の価値「散歩する女の子」~散歩マンガ界に新風。