「ダンジョン飯」~もう一度緊迫感を取り戻し、次巻以降に期待大 – 8th FEB.

「ダンジョン飯」~もう一度緊迫感を取り戻し、次巻以降に期待大

「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」などでダンジョンに入るとき、たくさんの食料を持っている。ダンジョンの中で食べる食事は外から持っていくわけだが、食事のストックが切れると(ゲームとしてはHPやMPがなくなったら)、探索途中でも一度引き返さなければならない。

「現地調達で食えるモンスター食べちゃえばいいんじゃないのか」という中学生の笑い話をそのままマンガにしつつ、きちんと骨太のストーリーを構築しているのが「ダンジョン飯」だ。

第一巻発売時には全国でほぼ瞬殺、電子書籍のチャートを一気に駆け上がった。その後の続刊も面白さと緊張感を併せ持つ展開で唸らせていたが、ドラゴンに喰われた妹を復活魔法で助け出すミッション(そのために急ぎドラゴンの元を目指す必要があり、食料現地調達の探検をしていた)が、いったんリセットされてしまってから、やや中だるみの展開になっていた。

…といっても、むしろ最初のクライマックスである4巻があまりにもできが良すぎて、そこからさらにストーリーを引っ張ることが難しくなってしまったせいで、作者のミスでもなんでもない。しかし、読者というのは残酷なもの。ここから先、どう話を盛り上げていくのか、あるいは盛り下がってしまうのか、今後のストーリー展開が気になっていた。ようやく先日発売になった新刊、あわてて買いに走り、コラム一本仕上げるまでのお預けにして書き上げたら一気に読んだ。

感想を一言でいうと「これはお見事!」というほかない素晴らしい展開で読者として喜ばされた。ストーリーには深みを与え、新たな緊張感をもたらす展開に仕切り直しをすることに成功している。

ここで種明かしをするのはもったいないので、興味があればぜひ読んでみてほしいが、一話ずつ連載をしながら話を将来にわたって深めていくのだから作者の能力には脱帽する。

「なんかすごいらしいけど、読んでないなー」というような人は今からでも遅くはないので1巻から一気読みしていただきたい。オススメです。

ちなみにこの作者、本作の大ヒット前から注目していたので、成功は素直に嬉しい。そして本作をあえて読まずに、この作者の作風を知りたいという人には短編集「ひきだしにテラリウム」をオススメする。こちらも心からオススメできる逸品である。

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