「憂国のモリアーティ」~そう来たか!と思わず唸る、最新ホームズスピンアウト作品~ – 8th FEB.

「憂国のモリアーティ」~そう来たか!と思わず唸る、最新ホームズスピンアウト作品~

名探偵ホームズといえば、誰でも知っているシリーズである。中高生のころいくつか短編を読んだ人は多いだろう。そしてスピンアウトに事欠かない原作でもある。

古くはアニメの「名探偵ホームズ」。キャラクターを犬化して宮崎駿アニメにしてしまったのもすごかったが、ハドソン婦人が若くて跳ねっ返り娘という設定がまたすごかった。というかワトソン夫人大活躍の回を見たことがない人は、宮崎駿アニメの魅力がふんだんに盛り込まれているので未見の方はぜひ。

最近では映画とドラマの双方でホームズが復活している。映画版はアイアンマン等で印象深いロバート・ダウニー・Jr.にホームズを演じさせ、背が低くて直情径行かつ武闘派のホームズという新世界を見せてくれた。この俳優とホームズが似合っているのが不思議だが魅力的だ。

ドラマのほうは「SHERLOCK」では現代イギリスに舞台を本案、スマホもGPSもネタに使ってしまう新しいホームズ世界が広げられたり、「エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY」のほうでは舞台がニューヨークになってなんと「ワトソン女史」が登場していたりする。

この「憂国のモリアーティ」もそうしたホームズスピンアウト作品のひとつであり、ホームズ好きなら読んでおかないともったいない!と思わせる上質なコミックである。

タイトル通り、主人公はモリアーティのほう。しかもモリアーティは純粋な悪役として登場しない。原作で登場する悪の組織のトップという設定を逆手にとり、実はイギリスの社会改革を念頭に「社会にあだなす悪に鉄槌を下す犯罪組織のトップ」という位置づけになっているのが面白い。

ホームズとモリアーティの間にすでに接点があったり(天才数学者として)、アイリーン・アドラーやマイクロフト・ホームズもすでに登場してユニークなポジションとして役割があったり(アドラーはMI6で“あの”有名人物に扮する)、原作をうまく再編しつつ、独自のストーリーを展開している。最新刊では同時代のエピソードである切り裂きジャックもネタに取り上げ、新しい物語として昇華していた。

このお話、何をどう考えてもライヘンバッハの滝でモリアーティとホームズが対決するシーンになだれ込むことは間違いなく、むしろそこにどう両者の関係を緊迫感のあるクライマックスとして持ち込むかがカギといえよう。

今のところ、ホームズはモリアーティの本当の姿は知らないが、犯罪卿の存在には気がついている。ふたりが犯罪現場で間接的に接触したり、直接会って会話をしている様子はなかなかスリリングだ。

現在、コミックは8巻が最新。クライマックスを何巻あたりに設定するのか、またライヘンバッハの滝「以降」も描くつもりがあるのか、期待するところが大きい。

8冊なら今から一気読みして追いつける範囲。すいすい読める絵柄なので、1巻のお試しをしてみてはどうか。ホームズ好きならきっと気に入ると思う。オススメである。

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