「赤狩り~THE RED RAT IN HOLLYWOOD」~あのローマの休日の作者は実は別人だった理由~ – 8th FEB.

「赤狩り~THE RED RAT IN HOLLYWOOD」~あのローマの休日の作者は実は別人だった理由~

映画「ローマの休日」は、かなり多くの人が見ている作品のひとつだろう。少なくともオードリー・ヘップバーンの笑顔や、真実の口に手をはさんだふりをしたグレゴリーペックに驚かされた表情などは見たことがあるだろう。

しかしこの「ローマの休日」が、長らく「別人」の作品としてクレジットされていたことはあまり知られていないだろう。脚本はイアン・マクレラン・ハンターと長らくクレジットされていた。その理由が「赤狩り」の影響だ。

東西ベルリン分断など冷戦がスタートしたころ、アメリカではソ連のスパイ活動の影響もあって、反共活動が盛んとなった。共産主義といっても政権転覆を企む運動から、穏当に資本主義経済を改善していく運動まで広くあるから一律にそれを否定するものではなし、行動に違法性を伴わない限りそもそも思想と信条には自由があるはずである。

しかしアメリカでは「現在あるいはかつて」共産主義者であったか、という大幅なくくりで共産党員とそのシンパが迫害される時代があった。「赤狩り」の時代である。その影響が大きかったのは社会的影響の大きかったハリウッドの映画関係者で、脚本家、スタッフ、俳優にまでその影響は及んだ。

先ほど「ローマの休日」の脚本が別人だと述べたが、今その脚本はダルトン・トランボの手になるとクレジットされている。トランボは当時、赤狩りの影響で仕事を干されており自分名義で作品を発表することができなかったのだ。「ローマの休日」は1953年にハンターにアカデミー賞を贈ったが、1993年には最優秀原案賞がトランボに贈り直されている。真実が認められるのに40年を要したというわけだ。

このマンガはコミックという手法を採りつつ、赤狩りの愚かさや恐ろしさを描く。ローマの休日に秘められたメッセージ(といっても政治的メッセージではなく「信頼」というメッセージだ)や、本当の脚本執筆者であったダルトン・トランボが追放の憂き目に遭っている中、ローマの休日がどう完成し、どうアメリカに受け入れられたかが見事に描かれている。

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ちなみに最新刊では最後まで抵抗したハリウッド・テン(10人)の罪はとうとう確定し投獄される。反対運動の機運は南北戦争が朝鮮半島で勃発したことで消えてしまうという辛い時期が描かれる。

この話、1巻冒頭では「ローマの休日(1953年)」「エデンの東(1954年)」」「猿の惑星(1968年)」を通じて赤狩りを描くとうたわれており、まだ続きそうだ。オススメです。

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