新人のほとばしる才気を短編で読むこの愉楽よ!~「室外機室」 – 8th FEB.

新人のほとばしる才気を短編で読むこの愉楽よ!~「室外機室」

今でこそ「ダンジョン飯」の作者として有名な九井諒子さんですが、初期短編集「ひきだしにテラリウム」を見いだしたときの感動は、今も忘れられません(当時、roomieにコミックレビューを書いてしまったくらいです →【いえよみ】コミックでショートショートを堪能!~「ひきだしにテラリウム」を読む)。「この人、すごい! たぶんヒット作を出せる!」と思ったものです。

新人の短編集を買うのはマンガ読みとしての趣味のひとつですが、今回もそのひとつ、どこかで紹介されていたのが気になっていて、「ほしいものリスト」に入れておいたものをようやく読みました。そしたらこれが……すごい! 「ひきだしにテラリウム」は星新一のショートのような趣(これは褒め言葉)でしたが、こちらは村上春樹の初期短編集のような雰囲気(これも褒め言葉)を醸しつつ、独特な雰囲気をまとった短編が収録されています。

図書館で別世界に迷い込む話もぐいぐい引き込まれてページをめくってしまったし、存在しない謎のラジオ番組を一年聞き続ける話も唸らされたし、謎の同人誌をめぐる短編もよかった。……とチラッと読みたくなりそうなレビューにしておいて、後は読んでいただきたい。

短編集で才能があることと、長編でヒットを出すことは必ずしも一致しないのが、世の中の難しいところではありますが、ぜひともここで立ち止まることなく、センスのある作品を次々と著していただきたいと思います。