勇者の死後も世界は続き、彼女は世界を見届ける~「葬送のフリーレン」 – 8th FEB.

勇者の死後も世界は続き、彼女は世界を見届ける~「葬送のフリーレン」

最近、iPadでコミックアプリをいろいろインストールしては試している。かなり古い作品をのんびり読むアプリ(男塾とか花の慶次とかキン肉マンとか)であったり、ちょっと前の準新作的作品から新作をアップロードしているアプリもある。あとやたらと異世界転生ものばかり載せているアプリもある。

サンデー、ジャンプ、マガジンが提供しているアプリとなれば、作品の豊富さに期待が集まるが、旧作にとどまらず新作でも凄みを発揮している。今回紹介する「葬送のフリーレン」などはまだ連載が始まって時間も立っていない現在進行形の人気作ながら、週刊誌から1週遅れで無料配信(広告つきだが)されているが、素晴らしいクオリティの作品だ。

基本のストーリーはこうだ。ファンタジーの世界で勇者パーティが魔王を倒す。王国の首都でお祝いの祭りが開かれる中、人間の勇者と人間の僧侶、魔法使いのエルフとドワーフの戦士が長かった旅の思い出を語り合う。

そこから話は一気に飛ぶ。数十年後、老人となった勇者とエルフは再会する。老いた勇者の描写に驚かされるが、長寿のエルフはまったく年を取っていないことにもまた驚かされる。エルフは生きている時間軸が異なるのだ。そして4人は久しぶりにある思い出をたどるが、その後勇者は亡くなるという展開をみせる。

第2話ではさらに僧侶も寿命が尽きようとしている(その後亡くなる)。そして、エルフの彼女は、若者の魔法使いの女の子(共に戦った僧侶の育てた子)、戦士見習いの男の子(共に戦ったドワーフの弟子)を連れて旅を始める。

ドラゴンクエストのようなRPGで説明すれば「エンディングのその後」を描くのが本作の面白さだ。そして物語としてきちんと成立させつつ、世界の描き方は徐々に深みを増していく。

勇者パーティの英雄譚も人間の世界ではほとんどおとぎ話の世界となっている描写がある。例えば、錆びた勇者の銅像を見上げる老婆が登場するが、世界が救われたときまだ若かっただろうと思う。そう気づくとドキッとする。

また、いくつかのショットを無言で1ページに配置するコマ割りがセンスがあり、世界を深めている。これはもう、読んでもらいたいとしかいいようがないが、不思議なページが毎話挿入される。いちいち何ページも書くことではないが、ちょっとした世界観を示すコマ、キャラクター同士の人間関係を深掘りするコマ、そしてちょっと笑いを取るコマが、フラッシュバックするかのように1ページに収まり、これが作品をより深いものとしている。

この作品の将来がどうなるか、というと、長寿のエルフにはまだまだ死は訪れず、今はまだ若い彼と彼女は年を老いていくことになるだろう。どこかで一気に数十年飛ばすこともできるし、今進めているストーリーを丹念にたどっていくこともできる。どちらになっても楽しみだ。

しかし、これが週刊連載でリアルで楽しめるなんてありがたい! しかもアプリで無料だ(広告が表示されるのでちゃんとお金は発生しているので大丈夫)。

ぜひ、「サンデーうぇぶり」をインストールして読んでみていただきたい。タブレットのサイズで読むのがおすすめだ。