アキハバラ@DEEP

アキハバラ@DEEP (文春文庫)
石田 衣良
文藝春秋 (2006/09)

 

秋葉原はとても好きな街だ。
最近ではヨドバシカメラができたおかげで
重心が山手線の東側に傾いているような気がするが、
自分にとって秋葉原といえば自作パソコンの街であって
中央通りの西側のことだ。
新宿や有楽町の電気店で4000~5000円するmicroSDカードが
秋葉原の裏道の小さな店を回れば1500~2000円になる。
これが秋葉原である。
(コミック、アニメの街であることもまた事実だけど、
 ここは観光地ではないと思う)

さて、石田衣良といえば、「池袋ウエストゲートパーク」など
地域性をたくみに取り入れた小説が上手い作家だが、
本作でも秋葉原という地域性を上手に取り入れ、
登場人物のコミュニケーションの不器用さに説得力を与えている。
そう、秋葉原は不器用な人の集う不器用な街なのだ。

話の内容は、インターネット時代を背景にした
現代の電子的ファンタジーでありつつ、
若者が集まるベンチャー的なワクワク感も織り交ぜ、
現実とも向かい合う話にまとめあげているところがおもしろい。
ついでにいえば、巨大な敵として登場する企業が
ソフトバンク的なのもちょっと可笑しい。

ところで、この小説の描く未来予想図の根っこの部分は
攻殻機動隊の2巻のような世界に近い。
石田衣良というと毛嫌いする層もあるかもしれないが、
それくらいの感じで、ちょっと目を通してみると
意外におもしろいと思えるのではないだろうか。
秋葉原とオタクを知る人(あるいは自分がそうである人)
にとって自分も当事者の一人になった気分で読める一冊だと思う。